阿呆の鳥飼:内田百閒著のレビューです
感想・あらすじ 鳥よりも内田百閒先生のほうが興味深い!
内田百閒、初読みです。小鳥の話ということで、これは一度読んでおこうと。なんてったって「阿呆の鳥飼」。タイトルもいいじゃないですか。小鳥の愛らしさにやられてしまう飼い主の阿呆っぷりが覗ける!とワクワクしながら頁をめくったら・・・・
私は小さい時分から小鳥が好きで、
色色な鳥を飼ったり、殺したりしました。
むむむ。
いきなり「殺」という文字が目に飛び込んできて、想像していたものと違うかも?と、早くも暗雲が立ち込める。さらに読み進めると、こんな言葉が・・・
厭き性・世話をするのが面倒・面白くも可愛くも何ともなくなり、
死んでいたり・逃げる・段々鳥がいなくなってしまう・・・
たった1ページで鳥に対してこれだけの殺伐とした言葉が並ぶ。すでに異質なムードが感じられるだけでなく、なんだか猛烈に内田百閒という人物に興味を持たざるを得ない状況に戸惑う。
まぁ最初のうちだけだろうと甘く見ていたが、それがぜーんぜん違ったのだ。
もう飼っている鳥の数だって尋常ではない。50羽とか、抑えて35羽とか・・・(汗)堪え性がなく欲しいと思ったら即手に入れる。そしてすぐ飽きる・・・みたいな。
鳥の中でも可愛がるものとそうでないものとがハッキリしている。ある意味とても正直な人なのです。
一番印象的だったのが、可愛がっていた鵯が留守中に猫に殺され、怒り狂った著者は翌朝物干竿の先に出刃庖丁を縄で括り、縁の下に這い込み、敵討ちを行う。って、もうなんと激しいことか。とはいえ、内田百閒氏は猫の本も出しているほど猫好きでもある。
本書は主に鳥との生活について描いているが、身近な虫や魚なども登場。
生き物の生と死、飼う者の身勝手さ、残酷さなどが存分に表現されている。
また激動の時代であった昭和の様子も話の中に上手く盛り込まれ、大変興味深く読むことが出来ました。それにしても、「ええーー内田百閒先生、そんな~」と何度叫びたくなったことか。
鳥の話も面白かったけど、一番興味深いのは百閒センセイそのもの!ユーモア溢れる人なのか、それとも素がこうゆう人なのか、気になってならない。今までにない人とペットの話でありインパクト強し!