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*** 新しい本との出合いがきっとある★書評ブログ ****

【レビュー】贅肉 :小池真理子

 

 

贅肉 :小池真理子著のレビューです。

 

 

贅肉 (双葉文庫)

贅肉 (双葉文庫)

 

 

なによりも怖い「贅肉」

 

 

たった1滴のインクでも、みるみるうちにコップの中の

水の色は変わってしまう。
本書に収められた小説は全体的にこんな感じなのだ。

 

まずは表題の「贅肉」。

内容は美人の姉がある出来事をきっかけに太り始める。
グロテスクなほどの食欲。とめどなく増えて行く体重。
やがて、太り過ぎて妹の世話なくしては生きられなくなる。
そんな姉に嫌悪し、冷やかな目で見つめる妹。

 

そして二人に襲いかかる悲劇。着地点が怖い。
「ええーーあなたもかい!」と思わず声が…。

 

そして、もうひとつご紹介。
大学時代の仲間うちで結婚した2組の夫婦。
ある日、夫の登山ナイフに付いた血を見た妻は動揺し、
もう一組の妻である女友達に相談。


そこから転がり落ちるように話が大きく飛躍して
…疑う気持ちが生んだものは…。


こちらも思わぬ方向に話が転がり終わる。
「あーそっちーーー?」と。─────「ねじれた偶像」。

 

 

他、5つの短編です。

 

全体的にほんの些細なことがきっかけで、とんでもない方向に
物語は静かに進行して行く。


そして、ホッと一息つけると思ったところに

ズドンと爆弾がおとされる…。

そこからまた新たな話が始まってもおかしくないような終わり方。
まるで渦潮の中に呑みこまれた気分です。

 

コップの中に落とされた1滴のインクがどんな色に染まるのか。
最後まで気が抜けない短編集でした。

 

そして…

痩せたと思ったら、またどこからともなく戻って来る憎き「贅肉」。
本当に怖いのは、こっちなんじゃないかと、リアルに自分の

体の中にあるミステリーまでも再確認した次第です。