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うずまきぐ~るぐる

本の紹介や日々のことをぐるぐるかきます

雁 :森鴎外

本の紹介(男性作家ま行)

雁 :森鴎外著のレビューです。

雁 (岩波文庫 緑 5-5)

雁 (岩波文庫 緑 5-5)

 

 

 

学生と金持ちの妾になった女性の淡い恋

 

 

自分の中で森鴎外の作品は敷居が高く、気やすくよむには「ちょっと…」と
思っていたのですが、コレがスルスル読めてしまうという意外さにニンマリ。

 

それもこれも、内容が恋愛の話で、舞台も東京の下町あたりという、

身近な感覚で読める作品だったからなのかな?通常の読書モードで

いけました。

 

文学的な難しいことはさておき、この作品の面白かった部分は、

・男性の浅はかさから成り立つ勘違い。
・恋に目覚めた女性(お玉)の細かい描写。
・物事がちょっとしたタイミングで上手く行ったり行かなかったり

と言うことの面白さ。

 

内容自体は学生と金持ちの妾になった女性の淡い恋を描いたもの。

話の中心はこの二人の恋の行方といったことになるのでしょうが、
私的にはこの妾を囲っている高利貸しの末造という男の行動が

なんだか滑稽でね…。

 

あっちでもこっちでも嘘をつき、危なくなると言い訳し、

自分では上手く誤魔化せているつもりでいる姿を見るとつい

「ねぇねぇ、ばれてるよ?」と耳元で忠告したくなる。

 

また、会うたびに美しくなる妾の姿を自分の手柄だと満足したりと、
お玉の心の裡を知っている読者にとっては「あーあー、お気の毒」

と思わず苦笑。

 

妾の喜ぶ顔を思い浮かべながら「紅雀」を買い、籠をぶら下げて
嬉しそうにしている男の姿。
その小鳥がその後、思わぬ恋のキューピットになってしまうというのに…。

 

一方お玉は、学生と少しでも交流をしたくて、ゴミもないのに

箒で掃除したり、ただ一足しか出していない駒下駄を右に置いたり、

左に置いたりしながらジリジリした気持ちで待つシーンは、

恋する乙女ならではの光景でくすぐったい感情が蘇る。

 

男性なのにこのあたりの描写が実に上手いなぁ―と思うのです。

 

さて、ラストは…。
人と人とのすれ違いを感じながら、終わって行く感じも悪くない。

先にも言いましたが、大変読み易かったです。

 

たまに入るドイツ語やフランス語に、外国かぶれというか、

「ル―大柴かよ!」と心の中でツッコミを入れつつ
余情ある作品を堪能させていただきました。