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うずまきぐ~るぐる

本の紹介や日々のことをぐるぐるかきます

高台にある家 :水村節子

高台にある家 :水村節子著のレビューです。

高台にある家 (中公文庫)

高台にある家 (中公文庫)

 

 

◆母・娘、それぞれの自伝小説を読み比べて見えて来たものは…

 

 

 

作家・水村美苗さんのお母様・節子さんの自伝小説です。

 

水村さんの「母の遺産」は、いわばこのお母様のことを描いたと
言われる小説ですが、こちらはそのお母様が自分の母親
(美苗さんの祖母)を含めて生涯を描いたものになります。
これで3代にわたる女たちの話を読み終えたというちょっとした
充実感があります。

 

78歳のときに発表したというこの本。
何が何でも書き残しておきたかったのでしょうか。

 

本書は最初から最後まで、登場する人物がものすごく多いので、
挫折しちゃうかも?と、不安がよぎりました。あの人のことも、
この人のことも書かなきゃという執念が伝わって来る勢いとでも
言うのでしょうか、読みはじめは相当な「圧」が感じられました。

 

昔の家族は人数が多く、その上、離婚・再婚・養子など今より頻繁に
行われていたこともあり一人の人物が関わる人数も相当多かったという
証拠とも言えるくらい、まぁ、出て来る、出て来る。


大勢の人々がこれでもかってくらい登場。それを追って行く読者は
結構大変です。なにせ全員知らない人だし、関係性も
知らないわけですしねぇ。

 

節子は芸者あがりの母と24歳年下の父との間の子どもで
「庶子」として育てられていた。
そんなことは何も知らず、親の愛情を一人占めして
生活してきたのですが、色々な人と接して行くなかで、

なんとなく自分の家は他とは違うと薄っすら感じ始める。

 

誰かに敢えて聞いたわけではないけど、両親の会話や、

人々の会話の記憶を手繰り寄せ、節子は自分なりに推測をしていき、
やがてぼんやりしていたことが明らかになってゆく。

 

父の浮気現場を目撃したり、両親の離婚による父との別居、
異父兄弟との交流、多感な時期に結構な事実を知ることになる節子。

 

そんな節子の心の中にあったものは、
「五歳の時に預けられた、横浜にあるハイカラな伯母の家」。
あの家の生活に憧れ、常に心を寄せていました。

 

とにかく登場人物の多さも多さだが、その一人一人の歴史まで
拾い上げて行くので、内容の重厚感は結構なものでした。

 

節子さんとお母さんの関係、節子さんと美苗さんの関係。
どちらもね、母娘の複雑な感情が同じなんですよねぇ。
歴史は繰り返されるとはまさにこのこと。

 

母親のことを疎ましく思う感情は節子さんもあったわけで、
美苗さんも同じような感情を節子さんに持っていた。
時代は変わったとは言え、脈々と続く母娘の関係の
複雑さに改めて感じ入った。

 

そして、憎悪しながらもなんとなく気になり放っておけないという
母親との関係。それがくっきり浮き彫りになった気がします。
そう、最後はやはり肉親は肉親なんだということを。

 

最初は話が方々に散らばっていますが、徐々に話が整頓され、
一人一人の過去と現在が繋がって面白くなります。

 

「母の遺産」「高台にある家」2冊セットで読むことを
おすすめします。(続けて読むのは結構ハード。

時間を置いて読む方が気持ち的に楽かも…)