プラントハンター 命を懸けて花を追う :西畠清順著のレビューです。
お花屋さんに並ぶ珍しい花の舞台裏をちょっぴり覗けた気がします
プラントハンターという言葉から受ける印象はターザンみたいな人が密林に忍び込み、珍しい植物をどんどん見つけて行く。そんなワイルドな世界が繰り広げられているのだろうと勝手に想像していました。
確かに筆者も人里離れた場所を飛び歩いているのですが、それがビジネスに結びついたり、運送その他にかなりの労力を要されるなど想像していなかった繊細な部分がかなりありました。
西畠さんは明治元年から続く老舗植物卸問屋「花宇」の5代目。
世界中を周り日本に入ってこない珍しい植物を追い求めている。
現代っ子っぽい話し方に関西弁の柔らかさが合わさった口調に親近感がもて、お喋りを近くで聞いているような感じで話が進む。
しかし、一歩踏み込んで彼を眺めてみると、植物に対する知識や愛情、職人としての意地がどのページからもビンビンに伝わって来る気迫があります。
本書は珍しい植物を見つけて、日本に連れてくるという話が中心で、現地の人々の交流や取引き、運送工程の難しさなど、どの話も物珍しいことばかりで発見の連続といった内容でしたが、それと同じくらい興味深かったのは、家業を継ぐということについてが意外にも新鮮でした。
高校を卒業すると同時に「とにかく海外で遊んで来い」と息子を送り出す父親。
いずれ家を継ぐことに気付きながらも、植物に興味のなかった西畠さんが、この海外生活で植物に興味を持ち、自然に家業を継いだことは、まさにお父さんの目論見通りとでも言うのか。理想的な流れとしか言いようがない。
本書の本筋はそこではないかもしれませんが、植物を愛する親子のやり取りも面白かったです。
現在、花屋ではいろんな国の花が何気なく並んでいますが、それらの花には、たくさんの人々の息がかかっていて、細心の注意を払い準備し、様々な困難を乗り越え、日本に入ってきた花たちなのだ。
この先、西畠さんをはじめ、プラントハンターのみなさんの手によってどんな珍しい植物が日本にやってくるでしょうか?楽しみに待つとしましょう。
書評には取り上げませんでしたが、
・「開花調整」の技術を利用したビジネス
・虫と格闘した話
・花のエロス
などなど、植物に関する面白い話がたくさん登場します。
目から鱗がポロポロ落ちました。