マールとおばあちゃん :ティヌモルティール著のレビューです。
二人のはしゃぎ声が本の隙間から聴こえてきそう。孫とおばあさんの絆を描いた美しい絵本。
マールとおばあちゃんはとっても仲良し。
そして二人ともとてもよく似ています。
マールもおばあちゃんも、がまんがきかずのくいしんぼう。
クッキーを口いっぱいにほおばって、びんをすっかり空にして。
─────こういうのってゴキゲンじゃない?
─────これ以上すてきなクッキーのたべ方がある?
二人は駆け回ったり、木に登ったりしながら
こんな無邪気な会話をしています。
なかでも、大きな木のブランコに揺られながら微笑み合う二人の様子が
この上なく楽しそう。
おばあさんも少女のようで本当にチャーミングなのです。
しかし、そのおばあちゃんは、ある日ばったりと倒れてしまいます。
そして、目覚めたおばあちゃんは、話せなくなり、たくさんのことを
忘れてしまったようです。
そんなおばあさんのことを、大人たちは別人になったと思いますが、
マールは違います。おばあちゃんはちゃんと解っているのだと信じ
そのかたくなまでのいじらしさがたまりません。
さて、その後おじいさんが亡くなり話が展開します。
本書はとにかく、絵が美しい。
なにげに登場している「りす」や「ことり」までもが
とてもキュートに描かれているし、
マールとおばあちゃんの着ているお洋服もとても可愛らしい。
なので自然に細部にまで目を凝らしてしまうのです。
これは書店や図書館で見かけたら、
間違いなく手に取ってしまう装丁。
気の早い貴女は、自分の家の本棚にディスプレイしてしまう
様子まで思わず想像しちゃうと思います。
そして…
愛情が本の隙間から溢れ出しているような…
ホロリとしながらクッキーを思い切りほおばりたくなるお話でした。