紙のむすめのレビューです。
紙から生まれる新しい世界と切り絵が融合した美しい絵本
ずっと気になっていた絵本「紙のむすめ」。
実物を見て、「おぉ!」と歓声を上げたくなるほどの美しい装丁。
このちょっと浮き出しているような洒落た細工は
手に取ってみないと解らない。
挿絵がすべて切り絵でできているのですが、
そのデザインの繊細さ、かつ愛らしさは、
ブルージュの店先に並ぶレースを彷彿させる美しさがある。
そして内容までも「切り絵」が関係していて、
作者の確固たる世界観を感じさせられました。
主人公は白い紙の丘に、
白い紙でできたちいさい家に住む
白い紙からうまれたむすめ。
彼女はたったひとり、孤独に生活をしています。
彼女の家にやってくる人もいません。
ある日、洗濯していると彼女のもとへ大きな紙が飛んできます。
器用な彼女は、その紙を使ってチョキチョキと色々なものを作ります。
気球、ふね、パーティのドレス、もも・・・・
悲しいことにどんなに作っても、一緒に楽しんでくれる人がいません。
紙を切れば切るほど寂しさを思い知ります。
しかし、あることを機に
彼女のまわりは日に日に賑やかになってゆくのです。
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最初は深々とした孤独な世界を味わいましたが、
後半はわくわく感が生まれ、楽しくなっていくという流れです。
まるで彼女の鋏は、彼女の未来を切り開いてゆくかのごとく、
生活が息づいて来る様子がとても清々しいです。
待っているだけでは何も変わらない。
自ら動くことによって開ける世界。
静から動へと変化する様子がとてもよかった。
ちょっと苦い紅茶に砂糖を入れて
ほんのり甘くなったときのような安堵感。
そんなラストシーンも。
そして、
わたしもどこかで足をぶらぶらさせながら、
誰かとおしゃべりしたい気分になったのです。
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