黄金の庭:高橋陽子著のレビューです。
池の蓮からお釈迦さまが生まれるシーンが印象的!
全体的におだやかな日常を描いた小説なのだけど、
強烈な不思議な出来事がちょいちょい出てくるのが面白い。
とはいえ、児童書にあるような不思議さとはどこか違う雰囲気をもっている「黄金の庭」。
この町に引っ越してきた青奈と那津男が日に日に目にする町の出来ごとに驚きながらも、それがいつしか日常になっていく。
お寺の閻魔さまが動いたり、池の蓮から毎日お釈迦さまが生まれたり、思わず買ってしまった指輪がしゃべり出したり・・・。でも、ここの住人たちはこれらを普通のことと受け止めている。
そして、何といっても強烈な印象を残したのは「アーちゃん」という捨て子の存在。
その悪童ぶりがすごいんだけど、これまた町の人々は動じない。
もう一人。こちらは大人の千ちゃん。
独特なキャラクター。モテモテで女関係が激しいこの千ちゃんの過去とアーちゃんの存在が徐々に分かり始める過程も面白い。
なんとも掴みどころのない話のようで、人間関係には複雑な事情があったりと、妙にリアルだったりもする分、どっぷりファンタジーな気分とまでは行かないのが魅力とも言える。
お釈迦さまが生まれるシーンは幻想的で魅力的。
「ひょっとしたらあの池も・・・」と、同じような池が近所にありそうな気がしてくる。
お花が咲いたり、虫が生まれたりするのと同じ感覚で、お釈迦さまが生まれる・・・日々そんな光景を見ていたら、この小説のようにそれが当たり前になるのかなぁ。
ほのぼのした雰囲気だけど、退屈することなくあっという間に読了。
サラッと読めたけど、結構心に残りました。他の作品はどうなのか気になるところです。
ちょっとした大人のファンタジーが読みたいときにおすすめです。