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*** 新しい本との出合いがきっとある★書評ブログ ****

【レビュー】沈黙のひと :小池真理子

 

 

 

沈黙のひと :小池真理子著のレビューです。

 

沈黙のひと (文春文庫)

沈黙のひと (文春文庫)

 

 

亡くなった父親には、意外な一面が。娘が辿る在りし日の父の姿。そこで見たものは…

 

 

小池真理子さんも親の介護や死について書くような

年代に入ったのか…とまず感じた作品。

 

パーキンソン病を患い、沈黙のうちに亡くなった父親の死をきっかけに、
遺された文書や手紙を手掛かりに、父の生涯を娘が辿って行くという

内容で、水村美苗さんの「母の遺産」の男性版のような感じがしました。

 

本書同様、小池さんもお父様を4年前に亡くしその遺品整理に関わったという。
そして、なんと、なんと、お父様の遺品の中から、アダルトグッズやAVが
出て来たというのです。

 

作品の中でもそんなシーンがあり、それを見た姉妹たちは何とも言えない
気まずい湿った雰囲気があったのですが、実際の小池さんと妹さんは大笑い。
笑い転げたそうだ。

 

年を取って、体が思うようにならなくても人間としての性の欲望や執着が
父親にもあったのだということを、小池さんはニコニコしながら
語っていました。

 

この話を聞いて、小池さん姉妹と作品の姉妹たちとのギャップが

なんだか面白く、読後どんよりしていましたが気持ちがどこか

軽くなりました。

 

まぁ誰にでも家族に内緒にしている物が部屋のどこかに
隠されているのではないかと思うのですが、もし自分が先に死んでしまい、
家族や身近な人に見られてまったら…なんてリスクを考えると、

なんとかしておかなきゃなぁーと煽られます。

 

「やーね、お父さん、こんな趣味があったなんて…」
ここで笑い飛ばしてもらえるか、軽蔑されるか…家族の性格とご本人の
日ごろの行いにもよるでしょうけどねぇ。

 

…なんて話が、小池さんご自身の話にもこの作品に出て来るわけで、
まさに家族や故人の身近な人にしか経験できない内輪的な話が

印象的でした。

 

死によって知る肉親の意外な一面。

こういうことって思っている以上に現実は多いものなのかもしれませんよね。

実話ではないけど、小池さん自身の体験を少しずつ織り交ぜて出来上がった

そうです。

 

随所に和歌が出て来るのですが、これは、小池さんのお父様が残された作品。
「沈黙の人」は小池さんが亡くなったお父様に捧げる作品とのことです。

 

やっぱり作家って格好が良いですよね。
肉親への想いをこんな形でサラサラ表現出来るなんて…。

 

でも、小池さんのお父様。自分の所持品を暴露されてしまうという…
出来る娘を持った父親のこれも運命ですよね(笑)