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【レビュー】尾崎紅葉の「金色夜叉」 ビギナーズ・クラシックス近代文学編

 

 

 尾崎紅葉の「金色夜叉」 ビギナーズ・クラシックス近代文学編のレビューです。

 

 

 

 

感想・あらすじ 「今月今夜のこの月を…」 …という名文句の実態を知る

 

私にとって一生読み切ることが不可能なのでは?と諦めていた本のひとつ。

そんな時にそうだ、そうだ。…と、このシリーズがあったことを思い出しました。早速借りて読んでみると、今までのあのどんよりした気持ちはどこへやら?というくらいスラスラと読めてしまう。しかも、当時の庶民たちに絶大な人気があっただけのことはある。

 

面白い、面白い。

 

「金色夜叉」は読売新聞に連載されていた「新聞小説」で、前・中・後・続・続々、新続編があり、長大な物語なのですが、本書では見どころをピックアップして紹介。

 

よくまぁ、ここまでコンパクトにまとめてくださった。全編を読んだことがある人となると、今では絶無に近いとも思われる。と山田さんは言っています。

 

大変面白い内容であるにもかかわらず、文体が今の読者に難しくて読めないということが原因で、現在では「熱海での宮と貫一の別れのシーン」ですら知っている人は少数派になってきているのではないかと。

 

私も何度か読み始めては投げ出してしまった苦い経験がありましたが、この本に出会えて尾崎紅葉がこの作品をどのような状況で書いていたかなど、作品だけでなくその背景を知ることができ感謝しています。

 

さて、本書は訳や粗筋、原文、解説、コラムなど、上手く組み合わせ進めていきます。訳だけでも充分ですが、解説でさらに時代背景などの細かい部分が考察されていて、まさに、かゆい所に手が届くといった形で誘導してもらえます。

 

 

 

 

物語自体は、男と女のすったもんだ。
貫一の許婚の宮が、金持ちの男性と結婚してしまうことから始まります。宮に裏切られた貫一は、金本位の世の中へ復讐を誓い、冷徹な高利貸<金色夜叉>になります。

 

別れたとはいえ、再会してはゴタゴタを起こす展開。間に色々な人々が絡んでくるのですが、基本的にはこの二人がどうなるかといったところだ。

 

勝手に結婚した宮だが、あとになって自分の気持ちに気づき後悔する。そして貫一は、短気で別れ際の捨て台詞も女々しいし、女性を蹴るというとんでもない男。しかも、後半は女性から逃げてばかりのしょぼさ。

 

どちらの気持ちにも全然共感が出来ないのだけど、主人公以外の人々も含め気持ちがストレート(すぎ)で、その異様な迫力についつい吸い込まれてしまいます。そして、この話の大きな魅力は未完で終っているということかもしれません。

 

とにもかくにも角川さんのこのシリーズ。
私の場合「古事記」も然り、同じような理由で諦めていましたが、このシリーズにて再び火がつきあれこれ読むようになりました。挫折した人々をグィっと助けてくれ、再チャレンジの機会を与えてくれるシリーズとも言えます。

 

「制覇した」とは言い難いけど、「金色夜叉」のスタートラインには立てた気がします。満足です。ごっつあんです。

 

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