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【レビュー】夕陽ヵ丘三号館:有吉佐和子

 

 

夕陽ヵ丘三号館:有吉佐和子著のレビューです。

夕陽ヵ丘三号館 (文春文庫)

夕陽ヵ丘三号館 (文春文庫)

 

 

団地という妻たちの戦場

現在、特に都会では隣の住人の顔すら知らずに住んでいるなんてことは結構あると聞きますが、この小説はそんな現象とは正反対の世界をこれでもかと描いた作品です。

 

高度経済成長真っ只中。人間関係が良い意味でも悪い意味でも濃ゆいです。

 

本書の舞台は一流会社の「社宅」。

「亭主元気で留守がいい」と言う言葉が思わず浮かんでしまう家族の姿。
夫たちは、仕事一筋で、家には寝に帰って来るだけといった生活。

 

家電の発達により、主婦たちの家事も随分楽になり、彼女たちは自由な時間を手に入れ、他人への干渉が激しくなり、日々、情報交換や噂話に花を咲かせます。

 

あることないことの噂、子供の学力の優劣、夫の昇進等から来る羨望、嫉妬、見栄、苛立ち、裏切り、ありとあらゆる感情が渦巻き、一体、誰を信じればよいのか…読者も深みにはまっていきます。

 

 

 

 

すごく深刻な問題までとはいかないが、毎日が小さな心配事や、苛立ちの連続でそこが妙にリアルで、これぞ主婦のストレスと言ったあらゆるパターンがこの作品には詰まり過ぎているほど詰まっています。

 

特に主人公の女性は、何をしても空回り。ご近所の付き合いだけでなく、夫や息子、そして、息子の学校の先生までと、関わる人関わる人、どうも面倒を起こしがちなのです。細かい女性ならではの世界を描くのが巧い有吉さん。読んでいる方まで、なんとなく胃がキリキリ痛み出しそうでした。

 

それにしても、もし本当に「社宅生活」がこういうものであったのなら、相当、神経が太くないと住めないなぁーと思ってしまいます。

 

全体的には、当時の生活様式や社会の様子がよくわかり、それなりに面白いのですがなにせ、人間関係が凄すぎて疲弊しました。終わりなき主婦たちの戦い。600ページ近いボリューム。分量内容ともに、体力のある時にどうぞ!