犬の足あと猫のひげ: 武田花著のレビューです。
◆淡々と語られる中にあるホラー性に思わずのけ反った!
気持ちが煤けてくると読みたくなる武田花さんのエッセイ。
知らないどこかへ行きたくなると見たくなる武田花さんのフォト。
ここ数年で出会った武田花さんの作品は、
自分にとってちょっとした休憩所のようなものになっている。
というと、なんだか癒しっぽい内容だと思われそうだけれど、
エッセイの中身は静かに事件性を帯びているようなものが多く、
ひたひたと迫りくるダーク感がたまりません。
いつも思うのは、
花さんのエッセイには「時代」がない。
今なのか昔なのか?
時が止まっているかのようなフォトが多いせいか、
綴られている話も一体いつの出来事なのか?
掴めない感じが・・・良い。
剥製・・・と言えば、武田百合子さんの「遊覧日記」を
思い出すのですが、今回、花さんも剥製の話をされている。
友達のT君の家。
箪笥の下に毛むくじゃらのもじゃもじゃした塊。
花さんの見たものは、「うぎゃーーーー」なものなのですが、
そこからのT君と花さんの淡々としたやり取りがもうホラー(笑)
しかも、その時にT君からもらったモノが剥製だったりする。
その剥製がまた・・・。
T君、相当な変人です。心臓がバクバクしましたが、
な、なんと、このT君、「剥製騒動」というタイトルで
エッセイ中盤にて再び登場!
もう強烈!
電車のなかで思わず「ぐわーー」とのけぞってしまった(笑)
最後の一行まで、このT君の変人ぶりが隈なく語られている。
本書はこのT君の話があまりにも強くて、
他のエッセイがすっかり霞んでしまったが、
後半の海沿いを中心とした話の数々で通常モードへと。
いい感じに中和されました。
天気のいい日に訪れたい場所があるように
天気のいい日に読みたい本がある。
花さんのエッセイは、
冬空が青くて高い日にのんびり読むのが一番いい。
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