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結婚:井上荒野

結婚:井上荒野著のレビューです。

結婚

結婚

 

 

 

◆騙し、騙され・・・

 

 

黄緑色にバーンと「結婚」という二文字と
作者の名前が真ん中に書かれているだけの、なんとも
シンプルなこの装丁。

 

この装丁から、これから読む「結婚」というものが
一体、どんなものなか、全く想像出来ない。


ハッピーな甘い小説というものは期待していませんでしたが、
読み始めはこの小説がどういった方向に向かうのか理解できず
戸惑いました。

 

宝石鑑定の職を持ち、名前を少しずつ変えながら
地方を周り、結婚詐欺をしている男。
結婚詐欺を手助けする相棒の女。騙される女たち。
そして、この詐欺師には若くて純情な妻がいます。

 

1章終わったろころで「あー結婚詐欺ってやつか…」と気付き、
なんだか、自分まで罠にかかったような悔しい気分に。

 

先日読んだ「だれかの木琴」もそうであったように、
井上さんの描く世界は、人間の孤独の隙間にいつの間にか
入りこんでくる「魔」というものを、意識させられものが多い。

 

前作もストーカーをしている本人がその意識がないといった感じで
すごく奇妙に感じたのですが、今回も被害者にその意識がない。
まぁ、詐欺ってそういうものなんでしょうが、読者を巻き込んで、
退屈させない設定は絶妙であった。

 

詐欺師の男が口にする言葉は、女の心とお金を鷲掴みにして
そして、気付いたら女のもとから消えている。

 

…本当に許せないことではあるのですが、この小説、
不思議とカッカした怒りの感情にならない。
それに、さほど不幸な感じも残らない。一体、なんなんだろう。

 

しかし、最後に来て…一番怖いというか強いのは、
何もしらないふり?らしきしている妻の存在かもしれないと、
感じるシーンが残る。

 

ん~またまたちょっとした闇を残して、読者を置き去りにするのね。
参りました。

 

最後に、この作品は、彼女の父・井上光晴氏の同名小説があるそうです。
合わせて比べ読みも、面白そうです。

 

 

 

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