女の庭:花房観音著のレビューです。
官能と推理が混じり合い、刺激的!
表紙の様子から、想像がつかないほど結構な官能小説でした!
舞台が京都ということもあり、性描写以外のシーンは、お馴染みの観光地や大文字焼などが登場し、自然に映像が浮かぶ感じで楽しく読めるのですが、男女のシーンになると
途端にエロスな世界が満開になる。
途中で「え?こういう話だったの?」と動揺し、一体この作家はどんな人だろう?と調べたところ、
第一回団鬼六賞大賞を受賞しデビュー。
京都女子大学中退。京都市在住。
バスガイドを務めながら小説を執筆する。
なるほど~。鬼六さんの名が出て来たことにより、官能路線なのかぁーと納得。「花房観音」という名前からして「怪しい深み」があるなぁーと思っていましたが。
ツイッターも「花房観音御開帳 」とかで、志麻子さんの名前も出ていたりと、すっかり方向性がみえたところで、再び読み始める。
内容は大学の恩師の葬式で同級生5人の女性が再会を果たす。
30代の女性達の各々の生活を各章で綴られて行くのですが…
そこには日常で決してぶっちゃけない彼女たちの恋愛事情、特に「性」についての秘密が語られている。
スゴイなぁーと思うのは、まさに「十人十色」の性の世界。これだけのパターンをよく集めたものだ…と、まず感じた。そして、これらのシーンに常にまとわりついて来るのが、この亡くなった教授の所有していた1本のビデオだ。
教授が欠席ということで、自習用にビデオを見ることになったのだが、そこには教授とある女が身体を重ねているというもの。恐らく生徒であるだろうと言うことはみんな感じている。この女は一体誰なのか……。
そう、この小説は官能小説と、この女性は誰かと言うちょっとした推理の要素もあり、最後までこの謎を解きたいという読者の願望を引っ張りつつ進む。
また、久しぶりに会う女性達の一種独特な視線が非常に巧く描かれている。「老けた」とか「綺麗になった」とか皺1本単位で過去の姿と冷静に見比べているあたりが、ギョッとするほど怖かったりします。このあたりの女性の容赦ない観察や言葉はめちゃくちゃ刺々しく何よりも怖い。
人には言えない「裏の私」。
「自分は自分」とまだキッパリ言いきれず、他人の方が幸せそうに感じ揺れる女たち。
この揺れ惑う30代半ばの女性達の日常と性の世界。そして、教授のビデオの女は誰なのか?
とにかく、早く謎を知りたくてガシガシ読みました。激しい描写はありましたが、なんだかんだあっと言う間だったなぁ…。