なんらかの事情:岸本佐知子著のレビューです。
◆トイレで見かけるカルミック?
こんなものをエッセイにするセンスにしびれます!
「ねにもつタイプ」は今年読んだエッセイの中で最も衝撃的な1冊であった。
私はたまたま今年この本を読んだわけですが、今回の新刊は6年ぶりということだから、ファンにしてみれば随分長い時間待たされたという待望の1冊であるとも言えよう。
岸本さんのエッセイにハマってしまった今、6年もきっと待てなかっただろうなー。
本書はイラストもエッセイの風味も「ねにもつタイプ」と同じような雰囲気で存分に世界に浸れますが、「ねにもつタイプ」を読んだ人には、前半、若干「強烈度」が薄れたかな?と感じてしまうかもしれません。
…が、やはり途中からどんどんエンジンがかかって来て「やっぱり、この人の独特な世界は健在」と妙な安心感が出てきます。
例えば…
ひらがなの「め」と「ぬ」、「ろ」と「る」などが、自分のことを日ごろどう思っているか?なんて妄想が始まるわけです。妄想は妄想なんですけど、岸本さんの言っていることは次第にもっともな感じがしてきて、その着眼点に「うぅぅ」と唸りそうなるのです。
今回私のツボだった話は「友の会」。
アスパラガスを食べたあと、尿に付着する臭いについて。
これに気付くまでの作者の道のりが書かれているのですが、独特な「にほひ」らしいのです。
岸本さんの知人も気付く人はあまりいないとのことで、そこを彼女はアレコレ考え検証したり、仲間を見つけたりと意欲的。会員の募集中まで本書でしています。
私も気になり、ネットで調べたら、確かに臭うらしいのです。けど、この独特のにおいは遺伝的に5人に1人の人しか嗅ぎわける能力を持たないということですから、岸本さんは鼻もかなり利く方ということが判りました。機会があったら是非みなさんも気にしてみてください(笑)
…と、こんなことが気になり出し調べている自分は、この時点ですっかり岸本さんの「罠」にハマっているともいえます。
また、彼女の不思議な話は「話すことのないものたち」が一斉に話し出すような内容のものが比較的多く、それらは何故か本当にあってもおかしくないよな…と感じさせられるものが多い。
岸本さんにとって、こういうことはきっと日常茶飯事だと思うのです。でも実際、こんなことをいちいち気にして考えてたら相当疲れるだろうなぁ…。
誰もがいつも目にしているものも、岸本さんにかかると世界が一転する。
この部分が面白くて、きっとヤミツキになってしまうのだろうと思います。
前作品の読書後は言葉にならないインパクトに圧されたが、今回は慣れたのか?読んでいても「なんだろう感」はそれほどなく純粋に話を愉しめました。
けど、「読み終わる=祭りのあと」のような気分にさせられちゃうのね。あーあ、もう少し読んでいたいのにとブツブツ言いながら、面白ネタの言葉の数々を拾いながら、取り残された自分がポツリと部屋の中に居る。
読書時間はあっという間。もったいないからチビチビ読んでも終わってしまう。
「次回までまた6年とか?それは絶対止めて!」と、声を大にして言いたい。