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【レビュー】あの子の考えることは変:本谷有希子

 

 

あの子の考えることは変:本谷有希子著のレビューです。

あの子の考えることは変

あの子の考えることは変

 

 

 

そうなの。本当にあの子もこの子も変なのです。

 

不気味な面白さのある小説だった。 と書きながら、これって小説だったのかな~と思えるほど、 活字を読んでいたという実感がない。

こう思わせちゃうところが凄いのだけど、 よく考えてみる、筋というものや物語のテーマ的なものが 読んでいる間は全く見えてこない。(一応、友情小説らしいが)

 

けれども何故にこんなに引きこまれていったのだろうとあれこれ考えた結果、 登場人物のキャラクターのちょっとした不気味さだけで成立しているという まったく稀な小説に新鮮さを感じたからかもしれないと。

 

とにかくあの子もこの子も変なのだ。

ルームシェアする巡谷と日田。 Gカップだけが自慢の巡谷。セフレがいるけど関係がこじれていく。 一方、日田はお風呂に入らないコンプレックスの塊の処女だけれども、 得体の知れない妄想からくる旺盛な性欲に困り果てている。

 

また、このまま一生誰ともセックスが出来ないかもという焦りも。 ふたりは環八沿いのゴミ焼却炉の近所に住んでいて、 日田はダイオキシンのせいで自分がおかしくなっていると思い込んでいる。 全体的に臭い、臭う。毛穴が塞がる。

 

こんなシーンが現れることしばしば。 イタイ二人があれこれぶつかり合いながら話が進むわけだが、 どうしてこんな風に展開しちゃうのか、そのぶっ飛び感と 小説が醸し出す閉塞感もじわじわやって来る。

 

これはあれこれ説明したところで伝えられるものではない。 「その場に居た人じゃないと実感できない」といった感じなのです。

 

ずっと会話で進む内容で、テンポも良くサックリ読めてしまう。

最終的には何も残らないのかな・・・なんて気持ちも途中よぎったが、 読後はなんだか爽快な気分になっているからこれまた不思議。 決して爽やかな話ではないし、焼却炉のシーンで終わっているのに なぜだか気分は晴れている。

 

「異類婚姻譚 」も不思議な小説でしたが、こちらもかなり 不思議な読み心地でした。 ここまでキャラクターを際立たせ、それだけで小説を引っ張ってゆく。 何といってもこのあたりが本谷さんの強みだと思う。