天翔る:村山由佳著のレビューです。
感想
村山さん、お帰り!と言いたくなる安心感ある作品
やっと村山さん戻って来たかな?と、きっとファンなら感じられる1冊だと思います。ここ最近、官能系やファンタジー路線になったの?と、作品を追うごとにどんよりした雰囲気と迷いが、なんとなく伝わって来ることが多かった気がしますが、それらの作品と今回では全く異なり、小説にきちっとした「軸」が見えました。
ずっと私自身も期待を込めて、村山さんの作品に対して辛口評価をしてきましたが、今回は「さすがです!&おかえりなさいませ」と、ちょっとした小躍り状態です。
なんだかんだ言っていますが、一度読み始めると止められない読み易さはやはりスゴイなぁーと感じずにはいられません。
昨年テレビで拝見した時に「また戻りますよ」とおっしゃっていた言葉を信じてよかったなぁ!
さて内容は、大好きだった父親が不慮の事故で亡くなり、さらに学校では理不尽ないじめを受け不登校になった一人の少女の話です。
この少女は不幸なことに母親もいないので、祖父母のもとで育てられています。心に深い傷を抱えたまま不登校になってしまった少女の新たな居場所は北海道の牧場。
そして、馬とそれに携わる大人たちとの関わりによって癒され、元気になる少女。
しかし、ここに集まって来た人々は、皆それぞれ複雑な過去を胸に秘め、チクチクと刺さるような痛みと葛藤しています。少女も同じく、気持ちが上がったり下がったり…自傷行為にまで及んでしまいます。
本書で特に注目は「乗馬耐久競技(エンデュランス)」の世界です。私はこの競技自体知らなかったのですが、かなり細かい部分まで描かれているので大変興味深く読みました。
とにかくエンデュランスがとてもハードな競技であること。そして、馬に対する深い愛情を持って行われるこのレースに心底引き込まれました。臨場感溢れる描写、大迫力です!
馬の躍動感に目を奪われつつ、少女のレースの行方が気になり、いよいよ目が離せなくなります。
果たして少女はこのレースを完走出来たのか?
また、この少女に光は見えて来るのか?
自然豊かな北海道、アメリカでの競技模様。そして、登場人物たちの不器用だけど、とても愛情に満ちた爽やかなストーリーです。エンデュランスという世界も含め、とても充実した内容でした。
エンデュランスってなに?
【エンデュランス馬術競技(Endurance riding )】
馬術競技の一種である。一般的に数十キロメートルの長距離を数時間かけて騎乗し、その走破タイムを競う競技である。耐久競技のため、一定の区間毎に獣医師が健康診断を行い、獣医師の判断により競技の続行が決定されるため、騎手は常に騎乗馬の状態に気を配る必要がある。
日本を含む世界各国で行われている競技であり、有名な競走としてはアメリカ合衆国のテヴィスカップ(Tevis Cup)が知られている。
2006年よりアジア競技大会の種目に採用されている。(Wikipediaより)