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劇場:又吉直樹

劇場:又吉直樹著のレビューです。

劇場

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◆可笑しくて、でも切なくて、そして愛おして。

   読み終わったとき、一体わたしはどんな表情をしていたのだろうか?

 

 

さてさて又吉さんの2冊目の小説。
色々な感想が耳に入って来るし、前作の自分の感想がチラついて、
なかなか真っ白い気持ちで読ませてもらえない。
これも超売れっ子作家さんならではの現象でしょうかね。

主人公、永田。
まったくもって腹立たしい男だった。
でも腹立たしいし、イライラすればするほど、
読者をそういう気持ちにさせちゃう文章を書いた

又吉さんに拍手を送りたくなる。

 

「もうなんでこんな嫌な人物や嫌な感情を嫌な感じの文章に

出来ちゃうんだろう。」なんて感じたら作家の勝ち。

そういう作品に出合うと、登場人物に共感できた、できない

という部分はどうでもよく、筆者の力量を感じてしまいます。

 

「劇場」は私にとってそんな作品だったと思う。

 

売れない劇作家と女子大生の恋愛。
永田はひねくれ者で、変にプライドが高く、嫉妬深い。しかもセコイ。
自分の鬱屈した感情を持て余し、恋人である沙希にいつも

ぶつけているような男なのだ。

 

さらに永田は稼ぎが少なく、沙希に食べさせてもらっているという
現状はヒモのような生活を続けている。

 

沙希はそんな永田にいつも寄り添い、気遣い、文句も言わず

一緒に暮らしている。いい子なのです。

 

沙希がいい子であればあるほど、永田の人間性が許せなくなる構図。

 

この恋愛、非難されるは永田であるし、現にイライラさせられた

読者も多かろう。そして沙希に同情する声も多い。

(こんないい子いるか?という声も)

 

しかし、私は同じように沙希にもイライラしていたのだ。
永田のことを丸ごと包み込む聖母っぷりに「なにを遠慮してんだ?」と
もどかしさが炸裂。いくら惚れているとはいえ、これはいつか爆発する
パターンだなと。

 

そんな沙希との生活は永田にとって余計に惨めに感じさせるものになる。
永田は自身の才能のなさを知っている。
いっそ、否定された方が憎むことができるとさえ思っているのだ。

 

永田という人物は極端ではあるけれど、そのあたりの複雑な感情を
正直に露出してしまうがゆえに反感を買ってしまうのだろう。

 

特に沙希のお母さんが送って来る食べ物の荷物を巡っての会話は
何とも言えない陰気なム―ド。実にリアルでイラつかされるのだ。

「劇場」は、そんなやり取りから読み取れるねちっこい人間心理が
なかなか面白い。

 

まぁここまででなくとも、あまりにも良い人や優しい人を目の当たりにして
戸惑ったり、自分との違いに愕然とし、居たたまれない気持ちになる。
・・・なんて経験はないだろうか? 

 

永田の言動に目を背けたくなったり、ひっかかったりするのは

なんだろう?と考えるとなんだか居心地が悪い。

 

ちなみに永田は関西弁で話している。
私は最後まで永田の台詞部分は「又吉声」で読んでいました。
や、ほんと多くのみなさんもそうだったのでは?
まるで又吉さんが文字に憑依していた感じでした。

 

最後に、「東京百景」の<池尻大橋の小さな部屋>を再読してみた。

まんまだった!(笑)
こちらを読んで本当の意味で「劇場」を読み終えた気持ちになった。

 

やはり永田を「又吉声」で読んで正解だったなと、
妙に可笑しくて、でも切なくて、そして愛おしくて。

 

何とも言えない感情が押し寄せ、

コツンと小さく頭を突かれたような感覚が残った。

 

 

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