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家霊 :岡本かの子

家霊 :岡本かの子著のレビューです。

家霊 (280円文庫)

家霊 (280円文庫)

 

 

 

岡本かの子の息づかいが漂う雰囲気ある世界へ

 

 

「かの子撩乱 」で、太郎の三輪車を乗り回していた

かの子の印象は私の中でかなり強く残っていて、

作品を読むのが怖いような、ちょっと気合いが
要りそうだなぁと考えていました。

 

短編が4つ収録されたこの本、280円なんですねぇ。
お買い得というのもなんですが、これだけの作品が手ごろな価格で
読めるのは幸せですね!

 

本書は「老妓抄」「鮨」「家霊」「娘」の4編。
どの作品も個性的で、女性のわりに骨太で筋肉も

しっかりついた文体といった印象です。

 

老いた彫金師が夜な夜な一椀のどぜう汁を求め乞う様子。
・ある青年に目をかけ、好きなことをつづけさせようとする老妓の執念。
・手製の鮨を握って食べさせる母親の愛情溢れる姿。

 

ひとつひとつのシーンがまるで写真のひとコマのように

くっきり浮かび上がり、頭の中にそのシーンが残される。


この強いインパクトを与える感じが、かの子そのもののように

思えてなりません。

 

岡本かの子はきっとグルメだったでしょう。
「食」に対する執着心が強かったからこそ、

こんな風に表現出来るのだと思うのです。

私がこの中で一番気に入った作品は「鮨」。
登場人物、雰囲気、内容展開、どこを取っても唸るほど良かった。

 

作ることも、食べることも、あまりに巧い表現に、

思わずゴクリと喉が鳴ってしまいます。


鮨を握っている手の表情などが描かれていたシーンは、

確実に自分もそばで見ていた感覚でしたからねぇ。
ここに登場する子供と一緒に「すし!すし!」と私も絶叫!(笑)

 

「ギザー:自動湯沸かし器」、「ブルーズ:胴まわりのゆったりした上っ張り」、
「ゆもじ:女性の腰巻き」等々、聞き慣れないレトロな言葉も作品に
いい感じに混じり、味わいのある雰囲気が漂ってきます。

 

そして、すべての作品から岡本かの子の息づかいが感じられます。
ひょっとしたら、岡本かの子はまだ生きている…
そんな生あたたかい温度がじんわり伝わってくる気さえして来る

作品でありました。