宇田川心中:小林恭二著のレビューです。
ひさしぶりに舞台を観に行きたくなりました。
又吉さんの本から興味を持ちました。「ちょっとカバンの中を見せてください」と又吉さんが警察から薬物の取り締まりをうけたという道玄坂界隈。
私もかなり馴染みのある場所で、昔の渋谷に大変興味があったことなどから一体どんな話になるのかワクワクです。
現在のスクランブル交差点で連れ違う少年、少女。
理由もなく惹かれあうところから話が始まり、私達はそこからまるでタイムトラベラーの如く三つの時代を移動しながら、愛し合う男女の様々な試練を目の当たりすることになります。
渋谷宮益町の小間物屋の娘はつと、道玄寺の若い僧侶の昭円。
この二人の恋愛話から、時代は遡っていき、道玄坂の名前の由来ともなった大和田道玄の話からどんどん話が広がって行きます。全体的に会話で構成されているので、内容はヘビーなのですがサクサク読めてしまいます。
時代が時代なだけに、すぐに首をはねたり、ちょっと信じられない出来事も多く、ずっぽり話にのめり込めなかった部分も結構ありました。
というのも後半、見せ場を多くしたかったのか、バタバタ色々なことが起こりすぎて、ん~~ちょっと盛り込みすぎて、くどさを感じてしまいました。もう少しスッキリ終わっていれば、私的にはジーンと来たかもしれないな。
「生まれ変わってもまた出会う」「愛とはつまるところ約束なのだ」などロマンチック炸裂!
そんな内容から、ちょっと松田聖子を思い出してしまう自分もなんだか…。(ってここで持ち出すのもなんですが、何故かあの涙の記者会見の映像が見えてしまって)こういうのも嫌いじゃないし、縁ある人とは巡り合うっていうのも信じたいと思う私。
でも、より心を揺さぶられたのはこっちかな~。
「生きながら地獄に落ちてこそ女なのさ。地獄におちてない女なんて、
眠っているのも同じさ。女が目覚めたら、そこはいつだって地獄なのさ。」
梅と言う毒婦が吐いたこの言葉に、ゾクッと来ます。
この話は、恋愛、ファンタジ―、時代もの等々、色々な要素が含まれているのでどんな方にも入りやすいと思います。けどやはり、舞台で観たいなぁーという気持ちが強く残りました。そして、鈴虫の鳴き声が響きわたり、瀬音が聞こえる道玄坂。
嗚呼、ひと目だけ、ひと目だけでもいいから見てみたかったな。