桃太郎 :芥川龍之介著のレビューです。
◆芥川龍之介の描く桃太郎はクロイ!
桃太郎の生まれたあの不思議な「桃」はなんで人が入っていたのか?
普通に考えたら気持ちの悪いことも、桃太郎の正義感や勇敢な姿に
かき消されていたのが、私たちが子供時代何度も聞いた桃太郎の話。
芥川龍之介の描く「桃太郎」とはどんなだろう?と気になり借りてきました。
ここに出て来る桃太郎は、嫌な奴で、鬼が島へ行ったのもお爺さんや
お婆さんのように、山だの川だの畑だのへの仕事に出るのが嫌だったから。
そして、お爺さんもお婆さんも、そんな桃太郎に愛想をつかしていたところ
だったので一刻も早く追い出したいと考え、旅支度を率先して整える。
…という様子からも、あまりに原作との違いに、うははと笑ってしまう。
これ、子供に読み聞かせできる内容ではないですよね。ダークすぎます。
しかも、お伴する動物達もなんだか腹黒く仲も悪い。
それとは反対に鬼たちは、ここでは平和に暮らしている。
そんな鬼たちを、やっつける桃太郎は悪者です。
あぁ、あの颯爽としていた桃太郎は何処へ…。
あぁ、あの従順だったお伴の動物たちは何処へ…。
登場人物の役割りひとつで反転しちゃう不思議世界がここにあり。
子供の頃、何度も祖父が話してくれた「桃太郎」。
芥川龍之介の「桃太郎」でなくて良かったわ~と
あらためて思いました。
さて、あの「桃」の正体は?
むかし、むかし、大むかし、ある深い山の奥に
大きい桃の木が一本あった。
芥川の描く桃太郎の冒頭文。
はじまりがほんの少し違うだけで、おぉ?と思ってしまうのが人の心理なのか。
私なんて冒頭からすっかりこのワル桃太郎に夢中になり、
まんまと本の中に連れ去られてしまったとさ。
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