ミッキーマウスの憂鬱:松岡圭祐著のレビューです。
◆夢の国のダークサイド。ミッキーも辛いのね…
ミッキーはNHKの紅白に出ているときは、
他国のミッキーは姿を隠しているとか、
(ミッキーは世界に一匹しかいないので)
もし本当の話だとしたら、その徹底ぶりに個人的にはちょっと引く。
この小説はそんなミッキーが居る「夢の国」であるディズニーランドで
働く人たちのゴタゴタを描いた作品です。
もちろんフィクションなので、内容まんまを現状のディズニ―ランドに
あてはめてしまうのは危険だけど、ひょっとしたら、こんなことも
起きているのかな?と妙にリアルに感じてしまうのも、
舞台裏について明かされていないことがたくさんあるからなんだろうと思う。
そんな、読者の好奇心を上手く掴み、
グイグイとこのドタバタ劇に巻きこんでゆく。
社員と準社員の格差、非情な上司、ミッキーの中に入る人たち。
主人公の青年は入社したばかりなのに、様々な事件に首を突っ込んで
行くというこのあたりの設定は普通はあり得ないと思うんだけど…。
なんて突っ込みを入れながらも、ディズニ―ランドの情景を浮かべながら
読み進めてしまう。
新人ながらも頑張る青年。ゲストとの頼もしい会話から
この仕事の難しさが感じとれる。
子供をいかに悲しませず、夢を与え続けられるか…。
これはもう、立派な童話作家なみの話を咄嗟に作れないとって思わされた。
そう考えると「夢の国」を保つのも大変だ。
以前、幾つになっても子供たちにサンタクロースの存在を
信じさせたいと躍起になっている母親たちの話を読んだことがあるが、
何かそんなちょっとダークな気配をどうしても感じてしまう。
まぁ、そうは言っても、行けば行ったで
すっかり「夢の国の人」になってしまう自分の存在も知っているのですが。
やはや、ミッキーも大変だねぇ。憂鬱になるのも分かる気がするのよ。