家守綺譚: 梨木香歩著のレビューです。
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感想・あらすじ
空が暗くなり、ゴロゴロ遠くから雷鳴が聞こえてくると外遊びを途中で止め、少し早めに帰宅しておやつを食べる。食べ終わる頃には、本格的に雨も降り始め、私は急いでタオルケットに包まりおへそを隠していつの間にか眠ってしまう。
小一時間ほど眠り、夕飯の匂いに誘われるように起きた私は、雷はどうなったのか?あれは今日のことだったか?昨日のことだったか?いや、雷なんて本当はなかったのか?
と、ぼんやりした頭で考える。
要は寝ボケていたわけですが、夢とも現実とも言えない世界をふわふわ漂っていた少女時代的夏の日の午後。本書を読んでいたら、鮮明にその時の感覚を呼び起こされたました。
掛け軸から出て来る友人、人間のように存在感のある犬のゴロー、草、花、鳥、河童、人魚…等々どれも短い話の中にスッと現れ、静かに呼吸をしながら、スッと消えて行く。
あれは一体…?
不思議なことをそのまま日常として受け止める人々。
そんな自然と一体化した静かな時間と生活。
今も昔も、おそらく日本人が好む世界観がこの本には詰まっていると思います。
静寂な世界から戻ってくるとザワザワ現実の生活音が聞こえ始める。
そんな雰囲気あるのお話でした。
この本を読みはじめた頃、家の玄関にひっそりホトトギスが咲いていました。
この話にも出て来たのでちょっとドキッとしました。
毎年見ているのに、今年はどこかから狸が「ホトトギスを眺めている私」を観察しているのではないかと、背後に緊張感が走ったのであります。
この花自体、なんか神秘的な怖さを感じるのは気のせいかなぁ。
文庫本