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おとうさんがいっぱい:三田村信行

おとうさんがいっぱい (新・名作の愛蔵版) 三田村信行著のレビューです。

おとうさんがいっぱい (新・名作の愛蔵版)

おとうさんがいっぱい (新・名作の愛蔵版)

 

 

◆もう逃げられないという怖さが忍び寄る

 

 

5つの物語。

タイトルからコメディな笑いを期待していたら大間違い!

怖いぢゃん!


静かに怖い。

ギャーとか叫ぶような怖さではなく、もう逃げられない怖さ。

 

表題の「おとうさんがいっぱい」はお父さんが増殖する話。
主人公の家である日、お父さんが3人になってしまう。


この家だけでなく町中でも同じ現象が起こり、

政府を巻き込み大騒ぎに。

 

「おとうさんは一家に一人でいい」ということになり、
さぁ、どのお父さんが家族と暮らせるのか…。
一緒に生活が出来なくなったお父さんの行方は?


結構なシリアスな終わり方なんですよ、これが。

他に私が最も怖かったのは「かべは知っていた」。

 

夫婦喧嘩の果て、おとうさんは家出をする。
家出といっても行く先は「かべ」。おとうさんは、子供の前から
かべに吸い込まれた。


おとうさんは、おかあさんに心配させたいがために、このことを
内緒にするように子供に言う。壁越しから、子供と会話は出来る。
この時点では、おとうさんはいつでも戻れると過信していたのだが…

 

父親と子供の壁越しのやり取りが、徐々に切ないものになってゆく。

反面、おかあさんはおとうさんを忘れ、やがて他の男の人を連れて来る。
気持ちもすっかり切り替えている。
そして新生活を始めるために引っ越しの準備へと…。

さっぱりしたものだ。

 

母親と正反対に子供は最後までおとうさんを気にかけている。
なんだかゾワッと寒いものを感じずにはいられない。
もちろん、この得体の知れない壁も怖いのだけど、
人間の気持ちの流れもかなり残酷で怖いなぁと。
このあたりを、子供たちはどのように読むのだろう…気になります。

 

そうそう、部屋では改築がはじまり、壁が壊されているようだ。
おとうさんは見つかるのか?

 

最後に「あー良かったね」と終われない話ばかり。
子供の本なのに、シビア~~。

 

世にも奇妙な物語」っぽいという感想もたくさんあるようだ。
確かに物語の合間にあの音楽にのって、タモリさんが出てきそうな
雰囲気です。

 

さて、うちの「かべ」はどうなのだろう?
怖いけど、そっと「かべ」を触ってみるか…。