明治宮殿のさんざめき :米窪明美著のレビューです。
◆扉を開けると…明治宮殿の世界がゆっくり広がって行きます
装丁のこの鮮やかで煌びやかなドレスを見て、
あっと言う間に心をさらわれた一冊でした。
本書は明治天皇を中心に明治宮殿の十二ヶ月を隈なく紹介。
なにせ知らないことばかり「へぇー、へぇー」と思っているうちに、
あっという間に読み終えてしまいました。
特に明治天皇のお人柄が随所に拝見できるのですが、
大変お気遣いのある方で、相手が皇族であろうと臣下であろうと、
必ず自分で考えてプレゼントを決めていたほど。
日々女性達に囲まれていた天皇は女心をつかむのも上手で、
女心をつかむには言葉もプレゼントも数の多さが勝負だ。
ダイヤモンドを一回贈るよりも、何十回の花束の方がずっと効果的なこともある。何よりも大切なのはマメさ。
…ということをよくよく知り抜いている。
…という、方だったそうです。
メモって下さいましたでしょうか?男性の方!(笑)
ちなみに天皇はフランスの香水を愛用し、そのビンが空になるとなかに
小さなお菓子を入れてプレゼントしていたそうだが、もらった女官たちは
こんな子供だましの品々でも喜んでいたそうです。
うんうん、この気遣いですよね。
女心を知り抜いている明治天皇、いいですね~。
マメなだけではありません。
生活の中でのユーモアも忘れないご様子で、
あだ名付け上手な有吉さんもビックリと思われるほど、
女官たちに面白いあだ名をつけて楽しんでいたそうだ。
また、天皇にお仕えする人々のリクリエーションなどの
エピソードがこれまた面白い。
お雛様になるとやって来るデパートや御用商人たちの
「お店屋さんごっこ」や、小金井で行われたお花見は
馬に乗って行ったそうですが、酔っ払った知事たちが
帰りに次々と落馬するなんて話もあります。
みんなの失敗談を誰よりも楽しみにしていたのが天皇だったという。
そして、一番印象的だったのは「御裳捧持者」。
13歳から15歳までの学習院中等科から選ばれた少年たち。
新年儀式に皇族妃のトレーンを捧げ持つという名誉あるお役目で、
その様子が描かれた章は少年たちの声が今にも聞こえてきそうに
思えるほど楽しいです。
こんな微笑ましい暮らしぶりの反面、やはり「新嘗祭」のような
伝統行事などのしきたりを守ることがどんなにハードな
ことであるか等々、興味深い話がたくさんありました。
本書はページをめくるごとに独特な世界と優雅さに吸い込まれる
といった感じでした。
そして、また表紙を見てうっとり……と。
大変貴重なお話です。
興味のある方は是非、一度読んでみて下さい。
ちなみにNHKの「坂の上の雲」の宮廷シーンの時代考証を
担当したのが本書の作者だそうです。