幾千の夜、昨日の月:角田光代著のレビューです。
秋の夜長を愉しむ一冊
タイトル通り、深い深い夜に案内してもらえる話がたくさん出てきます。
旅先の夜、林間学校の夜、病院の夜、孤独な夜…
夜といっても、場所や精神状態によって、夜はさまざまな表情を見せます。
角田さんは、世界のあちこちを旅して来たこともあって、
そこで過ごした夜についても、たくさんエピソードをお持ちです。
特に、砂漠で過ごした夜や、深夜列車の夜など、
こちらも一緒に旅をさせてもらった気分になります。
夜な夜な遊んだり、好きな人に会いに行くのにタクシーを飛ばしたり、
深い深い自分だけの夜の時間、そして、いつの間にか明けて行く空。
そんな日々を過ごしたことが、いつしか自分の姿と重なって、
ちょっと胸をキュンとさせながら読むのもまた良いのです。
この本の醸し出す雰囲気、私はすごく好きです。
明るい時間帯に読むより、やはり静かになった夜中に読むのに最適な1冊。
夜の大きなゆりかごに身をゆだね、深い眠りにきっとつけるはず。