人形姉妹: 円地文子著のレビューです。
◆二股男にイエローカードを叩きつけながら読み終える
女人形師。このなんとも格好いいキーワードと久しぶりの円地さんの
作品をと思い読んでみました。
姉妹って男性の好みが結構似たりするんですかね?
よく母親と娘は似てしまうと聞いたことがありますが。
確かに私の場合も母親と好みが一緒だという点が不気味です。
恐るべしDNA。
この姉妹は幼少期に複雑な家庭環境で育ち、姉が妹の親代わり的な
役割を背負い、青春時代を過ごしてきた。
やがて姉は人形師として独立し、ようやく人並みの恋が到来するのだが、
その相手は妹の恋人。「一生に一度の我儘と思って頂戴」と愛に走る姉。
そして、家に伝わる不吉な内裏雛が姉の元にやって来ると
姉妹の間の歯車が狂い始め二人の絆は切れかかる。
内容自体はそれほど複雑なものでもなく、流れるような文章に
気付いたら吸い寄せられていたとでも言うのでしょうか。
途中からズッポリハマってました。
そして、最後に起きる出来事にちょっぴりやるせない気持ちが残る。
埼玉の岩槻と言えば、古くからの「人形の町」。
この小説はこの地を出発点にし、雛人形という特別な人形を物語の
黒幕的な存在にして読者に常に意識させるという感じが憎い
演出なのです。
しかし、なんですね。この二人の女性を翻弄させるこの男性。
読んでいる限りでは、なんの魅力も感じないんですが、なんというか
ちょっとした隙にスルっと心に入り込むというこの絶妙な
タイミングがね。これも才能っていうのか…。
この男性に何度もイエローカードを叩きつけつつ読み終えました。