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愛ふたたび:渡辺淳一

愛ふたたび:渡辺淳一著のレビューです。

愛ふたたび

愛ふたたび

 

 

 

◆哀愁漂う複雑な男心、そして希望

 

 

<本が好き!の献本書評です>

 

「気楽堂」こと国分隆一郎、73歳。整形外科医。
妻に先立たれ気力が落ちたものの、これからすべて一人で
やっていかなければならないと第二の人生を医院開業という形で
再スタート。かなり元気な高齢者。しかも、恋人が二人もいる。

 

わぁーい、やっぱり渡辺淳一さん、草食系という言葉なんて
どこまでも無縁のご様子。

 

幾つになっても女性に囲まれているなぁ…。と、

小説の主人公=渡辺氏という図式が最後まで消せず、

渡辺淳一」をそのまんま主人公に当てはめて読んでしまいました。

 

というのも、この本を頂く少し前に、某番組で「渡辺淳一氏79歳が、
性的不能を自ら明かした」という話を聞いた。

 

今回の小説はそのことがテーマということで、一体どんな様子なのか、

高齢化に伴いシルバー世代の「性」について何かと話題に

なっていることだしと、好奇心半分読んでみたいと思ったわけだが…。

 

第一章「おとずれ」という意味深なタイトルから始まる。
なんの「おとずれ」かというと、前述した通り「性的に不能になる」
その時のことをここでは言う。

 

1ページ目書き出しが「えっ…」である。
ことに及ぼうとするが思うように反応しない戸惑いや驚きの様子、
心理状態が実にリアルに描かれています。体調のせいとか、相手を
変えれば…などあれこれ思い悩むのだが、最終的にその

「おとずれ」を認めざるを得なくなる。

 

しかし、渡辺氏…ではなくこの話の主人公「気楽堂」は、貪欲に
「性」を追究してゆく。様々なデータや人体の構造など、渡辺氏の
得意とするところというか、マニアっぽい部分が露出されている。

個人的にはそのような部分は他でも読めそうなので、

もっと小説としての展開を期待していたのですが、ん~、今一歩。

 

後半は、亡き妻の面影をしのばせる患者で40代半ばの女性弁護士と
恋人関係になり、不能でも女性を愛せるという自信を取り戻してゆく。
そこで、京都のデートシーンなどチラッと入るが、取り立て
感動するような場面はない。

 

最終的には世の男性に希望を…と「回春科」なる診療科目を
自分の病院に作るということに繋がっていく。この章を読んで、
「なるほど、私も頑張ろう」と思える高齢者やプレ高齢者男性は
どのくらいいるのか、私は女性なので推し量ることはできない
のですが、感想を聞いてみたいものです。


「なにごともなかったように静まり返っている」


この小説で何度も目にするこの言葉。

 

この言葉だけがなんだかやけに頭に残り、ちょっと切ない気分に
なりましたが、渡辺氏のように「女性大好き男性」にとっては、
そんな時期が訪れてもそれを跳ねのけてしまう別の力が
備わっているから、変わらず楽しく女性と関わって
いけるんじゃないかな?それも才能だと思うのですけどね。

 

女性達はあれやこれやと女同士体の不調など気軽に
話したりしているけど、男性の場合、このような話は男同士で
滅多に話さないというシーンは興味深かった。

 

男性としての諦め切れない気持ちの行方、戸惑い、
そして自信回復への道。

 

これらは個人的なことでなかなか見聞き出来ない部分。
そこに踏み込んで行ったという意味で話題性がある

作品と言えよう。

 

激しい恋愛模様を描き続けて来た渡辺氏がついにここまで
来たのか…と、読者の一人としてなんだか感慨深いものが
それなりにあった。