うずまきぐ~るぐる

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八月の六日間:北村薫

八月の六日間:北村薫著のレビューです。

八月の六日間

八月の六日間

 

 

 

◆山歩き、山登りは、日常や人生にとても似ている。

 

 

富士登山は死ぬまでに一度は・・・という話はよく聞く。
確かにそうだななーと思えど、あえて辛いことはしたくない
甘ちゃんのわたし。富士山は温泉でも入りながら眺めるのが一番だ
というところに落ち着く。

山登りと言えば冬山とか遭難とか高山病とか崖から落ちるとか、
何かと八甲田山の映像が浮かびあがり、怖いことばかり想像していた
自分にとって本書はいろんな意味で山の楽しさを教えてもらえた。

もちろん危険回避や自分の体調など十分な判断力が要されるが、
なぜ多くの人々がこぞって山に向かうのか解る気がしました。

設定も良かったなーと思う。
主人公は40歳を迎える文芸誌の副編集長の女性。
仕事も恋愛も人並みに経験し、それなりに心身ともに疲れる毎日。

そんなわたしは友人の誘いをきっかけに山歩きの楽しさを知る。
そして、休みごとに山へ向かう生活を送るようになる。

山での人間関係や宿泊に関する様子など、なるほどこういう時間を過ごすのか・・・
と知る楽しさがあった。

今まで全く知らなかった者同士が同部屋で過ごしたり、温泉に入ったり、
食事をしたり。彼女たちはあくまでも一期一会でさっぱりした関係。
自分たちのペースというものを尊重しているムードに好感が持てる。

一方、「わたし」と友人とのメールは気軽で楽しいものがある。
あずさ2号」の歌詞問題なんかは馬鹿らしいけど盛り上がる。
こういうの、自分たちもよくやるなぁーと親近感を持ちながら
くふふと笑いがこぼれた。

主人公が山歩き前にする旅準備のシーンも好きだな~。
彼女は毎回数冊の本を山のお供として連れて行く。
どんな本を選ぶのか、章を重ねるごとに楽しみのひとつになる。

山は日常からとても離れている空間ではあるけれど、
歩きながら日常を振り返る時間にもなる。
彼女は山で過去の日常を振り返り内省する。

山登りを始める適齢期なんてものがあるかは分かりませんが、
仕事も恋愛も成熟し40歳を迎えるひとつの節目、
無理がきく体力がまだある年齢は山歩きをはじめるのに
適した年齢のよう思えた。

主人公の彼女も日々色々ある。
心のバランスが上手く取れない日もある。

山歩き、山登りはそんな日常や人生にとても似ている。
山は自分を振り返ったり前に進めたりしてくれる場所なんだなぁーと、
本書を読んでしみじみ思った。

この感じは何かに似ている。
...と考えていたら渓流の風景が蘇った。
私にとってそういう場所は川かも?とふと思った。