特別な他人:高山勝美著のレビューです。
淳之介、スランプ時にちゃっかりこんなことを!&魅惑の指
淳之介の女好き、その淳之介を愛した女性たち。そして、それらの女性たちの書いた本を懲りずに読んでは書評を書いている私。みんな同類。だんだん、自分も「淳之介の女」気分になって来ました(笑)
前回、愛人大塚さんの本を紹介したばかりですが、今回も愛人であった高山さんという女性の作品になります。
作家を目指していた高山さん。
本書は自分たちのことを書いているのですが、淳之介のことを「中田」という名前に変え、ちょっとした小説風味に仕上がっているので自然な感じでサラサラ読める。
前回の大塚さんからは強烈な自己主張を感じたのですが、高山さんは比較的「普通の感覚」をお持ちで、淳之介との関係も常に「これでいいのだろうか?」と自問自答しながら続けている。
プロポーズされた男性と普通の幸せな結婚も考えたりもするのですが、時すでに遅し。
淳之介の呪縛から逃れられず結局、淳之介を選んでしまうのです。
一方、淳之介は前回の「ボクちゃん」と違い、わりとダンディな振る舞いをしている。
「追えば逃げる、逃げれば追う」を上手く使いわけ、彼女の気持ちを巧みに操っているように見える。いや、無意識かも?
相変わらず、居場所が定まらない生活。女性たちの家を転々としています。彼女に連絡方法は「母親の住まい」に電話をするようにと言っている。 ったく…。
そして「籍を抜かないことが生き甲斐になっている女と、籍をなぜ入れてくれないかと「僕を責めるのが生活になっている女」と、本妻と宮城さんのことを愚痴っている。もう一人の愛人・大塚さんのことは都合よく話してないのか?
もう全て自分でまいた種なのに、こんなこと言って同情引こうとするするあたり、子供かっ!
まぁ、そんな淳之介にはもう慣れました。今回の目玉的収穫は、何といっても彼女の作品がそのまま淳之介の作品として世に出たことでしょうか。
彼女の書いた「卵型の顔」が「技巧的生活」という話の挿話として、一字一句手直しなしでそのままだそうです。申し訳程度に「ある女性に貰った話」と前置きはあるらしいが… オィオィ淳之介さんよ!
彼女はそんな一字一句直さなかったことについて「きみの文章だって、一応は通用するものだ」ということを見せてくれた淳之介の「思いやり」と解釈しているから恋する女ですなぁ。挿話とはいえ、パクリですよ、パクリ(笑)
円地文子さんは、そんな作品を見て「今までと違う」と見破った。
これまたスゴイ!
最終的に高山さんは他の男性と結婚をする。しかし、淳之介は未練たらたら。大泣きするわ、結婚後も呼び出す始末。
「ぼくと付き合ってる間に何人の男と寝た?」
なんてとんでもない質問までしている。そんな調子でキッパリ切れない仲。最後に彼女は「この子はあたしの子」と突き付けて来る。笑いが抑えようもなく噴き上がるという女性の姿が描かれている。うぅぅ…この方もやはりタダモノではなかった…。
この部分はどうなのかな…
吉行淳之介に本妻との間以外の子供が居たのか?検索してみたが出てこないので、これはあくまでも作り話であったのか?
高山さんは愛人という立場でもあり、淳之介の作品に大きく関わって来た人物とも言える。書けなくなると頼っていた淳之介にとって、彼女は手放せないない存在の一人だったのでしょう。
ということで、母親を含め淳之介に関わった5人の女性の読み比べ終了。
やぁ、濃い濃い!
全ての女性に共通している淳之介に関することで印象的だったのは「細い指」と「病気」かなぁ。特に「指」はみなさん、綺麗に表現されていたので、きっと見惚れるほどの指であったのだと想像できます。
男性の指見ている女性って結構多いと聞きますが、この本を読んでいると納得。
ふぅ…とりあえず、淳之介の女性たちはここまでです。
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