着物の悦び―きもの七転び八起き:林真理子著のレビューです。
着物を着こなすには恥や失敗を経験しながら一人前になるといった感じですね。
1996年に出版された文庫本。
概ね20年以上前のことを綴った本になるのですが、
題材が「着物」ということもあり、今読んでも参考になる部分が多い。
着物の世界は奥が深い、敷居が高い、そして高級と言った
イメージがある。銀座に勤めていた時、毎朝、呉服屋さんの前を
通っていたのですが、季節ごとに変わるショウウィンドウを眺めては、
一体どんな人が買っていくのだろうか?ちっともお客さんが
入っているようには見えないけれども大丈夫なのか?など、
余計な心配をしていました。
まさに要らぬ心配でそれらのお店は今も銀座で
その佇まいを守り抜いている。
私自身着物と無縁の生活でしたが、ここ最近、着物や帯などに
ちょっと興味を持ち始めている。
着物のセールなどもちょこちょこ行くのですが、
それが結構独特な世界だったりして、戸惑いながらも
新鮮な驚きがあるんです。
一体これらのからくりは?なんて素朴な疑問も、
本書を読んで「そういうことか、そういうものなんだ」と頷ける。
もちろん、私は林さんのように高級なものは買えませんが、
帯のランクとか、展示会の話などとても参考になりました。
いやぁ本当に奥が深い世界です。
何事もそうでしょうが、着物を着こなせるようになるには、
それなりの恥や失敗を経験しながら一人前になる
といった感じですね。
林さんのエピソードからも、まさに七転び八起きといった具合で
苦労しながらも、自分のものにしていった様子が窺えます。
それにしても20年前の着物業界も、今の着物業界も
さほど変わらぬ雰囲気。
本書がちっとも色あせた読み物に感じなかったのも、
着物と言う伝統がいかに時代に左右されずに
生き残っているかということなのだろう。