じごくゆきっ:桜庭一樹著のレビューです。
桜庭一樹さんの作品は数冊しか読んだことがないのですが、
どうも相性がわるいのか気持ちが乗らない読書になってしまう。
短編集はどうかな?と期待したんですが、ん~。
正直よくわからないものもありました。
人間の心の問題と密接に関わりのある社会問題が見え隠れする。
どこか歪んでしまった人々が登場する話は時に不気味であったり
不可解であったりする。暴力の話などは痛々しく気持ちが殺伐とした。
そう、本書は章を追うごとに気持ちが沈んだ。
救いがないから読んでいて苦しいのか・・・。
◆オリンピックがやってきた:堀川 アサコ著のレビューです。
昭和のオリンピック前と、平成のオリンピック前の様子の違いが
分かると面白そうだな…と思って借りたところ、特にオリンピックに
焦点を当てた話というのではなく、その時代の青森のある町の人々の
あれこれを描いた小説でした。
毎日病院の待合室に集う?お年寄りたちの方言でのお惚けトークが
和む。また、西洋館に住む謎のロシア人奥様と住み込みのトキさんとの
出会いのシーンに目頭が熱くなる。
家族がお茶の間に集まりTVを楽しみにしている時代。
テレビだけでなく、日本人全体が明日の日本に大きな期待を
寄せていた時代でもあった。
現在、テレビは娯楽でもなく、どこに居ても見られる存在になった。
そして明日の日本に期待することよりも不安の方が大きな社会になった。
現在も同じくオリンピック前なのに、人々の高揚感が圧倒的に違う。
本書を読んで豊かだったのはどっちなのか?と、思わず考えてしまった。