雨月物語 魔道、呪い、愛、救い、そして美の物語集のレビューです。
雨月物語 魔道、呪い、愛、救い、そして美の物語集 (ストーリーで楽しむ日本の古典 5)
- 作者: 金原瑞人,佐竹美保
- 出版社/メーカー: 岩崎書店
- 発売日: 2012/07/30
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 18回
- この商品を含むブログ (4件) を見る
◆「雨月物語 」
──この美しいタイトルからは想像もつかない恐ろしい話
長い間、読もう、読もうと思っていてなかなか読めなかった「雨月物語」。
借りて来たはいいけど、この本を読むことを遮るかのように平安文学発作が
起きてしまったので、渡辺淳一さんの「天上紅蓮」を急遽読むことにした。
そこで璋子と白河法皇の子・崇徳天皇の不憫さや母親を守る姿に頼もしく
感じたりしたわけだが、次に控えていた「雨月物語」で「崇徳」という文字を
こんな形で見るとは思わなかったので、一瞬「なになに?」と、
たじろきましたよ。
まるで、「天上紅蓮を先に読んでから、雨月物語の変わり果てたオレを
見るがよい」と崇徳院さまに誘導されたような・・・.その不気味さったら!
さて本書は、文芸部の生徒たちが、一話、一話、発表してゆくという形式で
進行してゆき、かなり読みやすい。
彼らの漏らす感想等は現代っ子らしい口調で語られているので
古典+新しい文学解説といった新鮮な空気感がある。
これを良しとするかは、きっと意見が分かれるところだと思うのですが。
9つの話の中で何と言っても「白峰」が一番来ました!
西行法師が讃岐国を訪ねた時の話で、あの崇徳院さまが成仏せずに
怨霊となって登場するという恐ろしい話。荒れ狂う崇徳院さまの
魔王っぷりがド迫力です。
「天上紅蓮」で見た幼い姿はもうそこにはなく、すっかり変わり果てた姿に
私もびっくり。恐ろしいです。負のパワー全開で!
「雨月物語 」──この美しいタイトルからは想像もつかない
恐ろしい話ではあったけど、サブタイトルにもあるように
「魔道、呪い、愛、救い そして美の物語」と、色々な要素が
含まれた物語でもあるので、どの話も読み応えがあり、
読後のしっとり感はなかなか味わい深みもあるのです。
本書は大まかに言えば入門書ですね。
一人でも多くの子供たちに読んでもらいたい、子供たちに古典に
馴染んでもらおうという雰囲気で、興味がもてるよう様々な
工夫が感じられました。
がしかし、大人はこの内容を土台に、やはり混じりけのない原作にも
触れたくなると思います。
さて、崇徳院さま・・・このままどこにも登場せず
私の中で幕が下りてくれるといいのですけどね。
またどなたかの書評から呼ばれちゃうかも~。
それが何よりも怖かったりします(笑)