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たゆたえども沈まず:原田マハ

たゆたえども沈まず:原田マハ著のレビューです。

たゆたえども沈まず

たゆたえども沈まず

 

 

 

◆日本美術とゴッホの作品が寄り添っていた時代

 

 

マハさん安定のアート小説でした。

自分が最初に覚えた有名画家と言えばたしかゴッホだったと思う。
覚えやすい名前とひまわりの黄色、そして「耳」という衝撃的な話が
セットになって子供心にも強いインパクトを受けたのだろう。

その後ゴッホについて詳しく知ることもなくこの年になったわけですが、
またまたマハさんの小説で画家自身の生涯を知ることができ、
毎度ながら良かったなぁーと思うのであった。

小説ではゴッホ自身のことを描いたものというよりも、
ゴッホと深い関りのあった人々の静かでそれでいて情熱的な想いが
あらゆるシーンから感じ取れ、こちらも毎度ながら胸が熱くなる。

青年であった林忠正と重吉が、渡仏することの夢を叶えるべく熱く語らう
初々しい場面から、やがてフランスで画商として活躍するシーンへと展開。

日本美術、特に浮世絵がブルジョワジーにもてはやされ
売れに売れていた当時の様子に胸が弾む。
日本から続々と仕入れた美術品がフランスにやって来るシーンは、
読んでいてとても楽しかったです。

やがて二人は、ゴッホ兄弟と出合うことになる。
ゴッホの浮き沈みの激しさにもめげず、全て彼の面倒みている弟の献身ぶりと、
弟同様に忠正と重吉もゴッホの才能に早くから気づき、やがて世に出てゆくだろう
ゴッホのことを静かに見守っている。

しかしゴッホ自身、なかなか安定することがなく、
ゴーギャンとのアルルでの共同生活などを試みるも、
なかなかうまくゆかず。一体どうなってしまうのか?

私はてっきりそうは言っても最終的には落ち着くのかと思っていましたが、
ラスト寸前にガツンと2度ほど衝撃を受け、ゾワゾワしました。

この兄弟はこんなにも結びつきが強かったのか・・・と。
生き方が不器用だったふたりの兄弟。切なさが沢山残るラストであった。
本当にあっけなく・・・なんですね。

人々の個性や持ち味も上手く表現されていました。
タンギー爺さんや、テオの奥さんなど、脇に居た人々も本当に魅力的。

とにもかくにもゴッホだけでなく、日本の美術が広まった過程など、
興味深い内容が盛りだくさん。

もしヨーロッパで浮世絵に出合ったらわたしはきっと、
林忠正と重吉という日本人が居たことを思い出すでしょうし、
英泉の浮世絵を見たら「英泉の浮世絵の前で顔に輝きが広がったゴッホの姿」を
思い出すでしょう。

アート作品を読むたびに作品の裏にはたくさんの物語があったことを
知らされる。それと同時に物語を含めてこそ絵画鑑賞は面白くなることを
教えてもらっている。

ということで、アート小説は読むとその絵画が観たくなる。
ゴッホ展・・・現在、やってるんですね(笑)

 

 

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