◆乗りかかった船:瀧羽麻子著のレビューです。
造船会社のお仕事小説でした。
船を造るという大仕事に関する細かな話かなーと思ってたのですが、
どちらかと言えば人間ドラマがメインだったように思う。
船を造ると言っても、全員がそれに関わっているわけではなく
営業職もあれば人事の仕事などもある。本社だけでなく地方に
転勤している社員もいる。
船を造るという仕事に憧れて入社しても、必ずしも直接関わる仕事に
就けるとは限らない。そんなサラリーマンならではの
世界を描いている。
短編で繋がる話には各主人公が登場する。みんなそれぞれの
悩みや想いを持って仕事をしていることを中心に淡々と物語は進む。
取り立て大きな波乱があるわけではないのだけど、
なんとなくじんわり来る話が多かった。
特に最終話の親子の話は親心と子供が親をいたわる気持ちが
良かったかな。
「適材適所」
━━━この言葉が最後まで頭の中を占領していたな~。
◆文豪の女遍歴:小谷野敦著のレビューです。
赤裸々な性愛の記録とやらでしたが、参考文献の寄せ集め的で
特にこれといった驚きはない。
筆者の好みとか熱の入れようによってページ数を割いているものと
そうでないものとの差が激しいのもなんだかな。
あまり深く追及する類のものでもなく、いわばWikipediaの文豪版
といった感じででサラっと読んで特に感想も持たずに読了。
ちょうどこの時、伊藤野枝の生涯をたっぷり描いた
瀬戸内さんの本を読んでいたせいもあって、
かなり物足りなさを感じたのも否めない。
取材を含めその人物のことをどこまで追い求めて本にしたかが
気の毒なくらい如実に差が出てしまった感じだった。
辛口で申し訳ないが....。