TOKYO STYLE :都築響一著のレビューです。
生活感100%剥き出しのお部屋本
一般の方々の「お宅拝見」的なインテリア雑誌を見るのが好きでちょくちょく目を通しているのですが、これがねぇ・・・間取りや部屋の広さの違いから、参考にしたくてもなかなか出来なかったり、予算的に無理!無理!といったものが多く、たいていは「ふぅ・・・いつかあんなお部屋に・・」とため息をつきながら本を閉じることが多い。
で、こちらの本も別の意味で真似の出来ないお部屋紹介がされているのですが、すごいですよー。最初から最後までめくっても、めくっても、部屋・部屋・部屋!なんです。
いわゆる冒頭で書いたインテリア本とは違い、本当に「ある人の日常」をそのまま載せているので、撮影用に掃除したり、広く見せるような細工が一切なく、まさに「まんまの部屋」で非常に生々しいです。
・吸い殻の溜まった灰皿。(時代ですね・・・喫煙率が高い)
・あちこちから見える、剥き出しの電気コード。
・茶渋のついたマグカップ。
・破れたふすま。
・大量の洋服。
決して綺麗な部屋ではないけれど、ついつい目を凝らして見てしまう。というのも、その頃と今とではだいぶ生活が変化していることが部屋の中に置いてある物から分かる。
(1993年に出版されたそうなので、取材自体は恐らくその前からなのでしょう。)
分かりやすいところで言うとやはり家電です。テレビは「うわーこんなに厚かったっけ?」というくらいもっさりしているし、マックのPCも一体型の機種で懐かしい。
VHSのビデオテープが並んでいたり、2枚扉の冷蔵庫があったり、洗濯機も二層式だったりと、いくら見ていても退屈しない。
私もこれらの物に囲まれて生活していたはずなのに、なんだか遠い遠い昔の風景を見ている感じなのが不思議です。家電の進化は本当にめざましいですよねぇ。
また、本棚に無造作に並んでいる小説や雑誌のタイトルから部屋の住人がどんな人物なのかを想像しながら写真を眺めていると、その部屋からなかなかな抜け出せなくなる。
本書は住人のプロフィールはざっくり載せてあるけど、ご本人は登場しない。でも写真の中には確かに人の気配を感じるし、生活感が溢れ出ていて、散乱していればいるほど、得体の知れないパワーが漲っているように思える。
ただ、震災経験後の今、天井まで物で埋め尽くされた部屋、という風景は恐怖心が先に立つ。
あと、コードの配線があちこちにあったり、ストーブの位置など、小心者の私は火災の映像がよぎっちゃって心配事が絶えない。
でも、本書に出て来た住人たちの90%は数年後に引っ越しているそうだ。だから今はこれらの部屋は存在しないということを「あとがき」で知り、ちょっとだけホッとした。お部屋拝見ってやっぱり楽しい。部屋ってネタの宝庫ですな(笑)