年月日:閻連科著のレビューです。
目標がシンプルになればなるほど、「生」がより一層大きく浮かび上がって来る
このはなしの中に居た時間は
ずっと孤独だった。ずっと不安だった。
来る日も来る日も暑さと戦い、
来る日も来る日も食料を求め歩く。
明日が迎えられるかどうかも判らない日々を
ただただ老人と目の見えない犬の姿を追うだけの時間は、
本当に孤独で不安であった。
物語は千年に一度の大日照りの年のある村。
村人はみなこの村を離れたが、老人と盲目の犬だけが
1本のトウモロコシの苗を守るためにここに残った。
過酷な天候の中、食料が尽き、ネズミを食したり、
水を求めて歩けば狼の群に出会い立ち向かう。
話はどんどん劣悪な状況に陥っていくのだけれども、
そうなればなるほど老人と犬の生命の鼓動が大きくなっていくような
感覚がやってくる。
食べること、飲むこと、そしてトウモロコシを生かすこと。
目標がシンプルになればなるほど、「生」がより一層大きく
浮かび上がって来る。
単調な日々を描いているにすぎないのに「生きる」「生かす」ことの
意味や目的が徐々に見えてくる描写は見事だった。
そしてラストに近づくにつれ、ずっと孤独で不安だった気持ちは消え
次に繋ぐことへの力強さを感じる。
フリオ・リャマサーレスの「黄色い雨」を思い出すような雰囲気でした。
「黄色い雨」はラストに向かうほど幹が細くなっていく感覚があったけれども、
「年月日」はどんどん幹が太くなっていく感じだった。
いずれもがっちりと心に根を残していくような話であった。
今はお爺さんとメナシが生まれ変わって、
またどこかで仲良く暮らしていることを信じ、本を閉じた。