器つれづれ:白洲正子、藤森武著のレビューです。
◆この時代まで生き続けてきた陶器や道具たちは、逞しくもあり、美しい。
白洲正子さんからの最後の1冊となった本です。
白洲さんが骨董好きであることは有名ですが、
ことあるごとに「白洲さんもね…」と同じく骨董好きの母が
彼女の本をよく読んでいることから、間接的にではあるが
長年情報を聞かされて来ました。
最近になって、私もなんとなくこの世界が気になりはじめ、
今まで聞き流していた母の話も、案外面白いことが分かり
少しだけ…と、ページをパラパラめくったのがこの本。
白洲さんが愛情を持って集めたふだん使いの器や道具150点。
写真と、骨董を通しての友人たちのエピソードや、
骨董への想いが綴られています。
この時代まで生き続けてきた陶器や道具たちは、
逞しくもあり、美しいなぁと何度思ったことでしょうか。
一般的にこういう趣味の世界は、初心者や素人には
読みにくい書物ばかりだという印象でしたが、
白洲さん自身が骨董に対して余計な貴重品扱いをしていない、
気楽に使って愉しむものという価値観であるので、
私のような者にとっても、すんなり無理せず読めてしまいました。
例えば、漆かきの職人が腰に下げていたとい漆桶。
一輪ざしとして、白洲さんは使っています。
漆桶の存在自体知らなかったわけですが、
私自身が今、江戸ブームに入っているので終始感動。
この時代の陶器や道具は、見ているだけで心躍りました。
それにしても、白洲さんは男前レディ!
言うことにメリハリがあり、サバッサバッしている。
どんなに上等で高い品物でもお蔵にしまったり、棚に飾るだけでは
自分のものにならないと言う。
白洲さんの器などは、毎日そばに置き、荒っぽく使っていたそうだ。
瑕がついたり、はげたりするけど、道具はそこまで付き合わないと、
自分のものにならないときっぱりおっしゃる。
人生論にも繋がりそう言葉ですよね。
「割ったらどうしよう~」なんて考えず、ガシガシ使っている
様子が窺えなんだか格好いいなぁ。
そんなこんなで、あっという間に一気読み。
それにしても、この世界、知ってしまったらどこまでも…という気がして
興味を持って良いものか、なにか危険な予感がする。