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*** 新しい本との出合いがきっとある★書評ブログ ****

【レビュー】一〇〇年前の女の子:船曳由美

 

 

 

  一〇〇年前の女の子:船曳由美著のレビューです。

一〇〇年前の女の子

一〇〇年前の女の子

 

 

 

小さな引き出しをいくつも開けていくような、そんな楽しさがある1冊

 

 

100年前、小さな村に一人の女の子が生まれた。
あちこち養女に出され、苦労を重ねながら、村の暮らしのなかで成長していく――。
そんな様子を、船曳由美さん(71)が母テイさん(100)の回想に耳を傾け、
そして、綴った1冊の物語です。

100年前というと、かなり昔のような気もするが、全く知らない時代というわけでもない。ご先祖様など言うと、ずーーと昔の人を指す言葉のような感じがしますが、身近なご先祖様といえば、私には明治時代あたりがご先祖様感が強い。

そんな時代に生きた人の話を聞いてみたくて、この本を読むことにした。

この装丁、そして養女などの言葉から、私はてっきりコテコテの苦労話「おしん」のような話を期待してしまった。(装丁の絵、いかにもって感じじゃないですか?)


しかし、それはごく一部であって、内容は高松村の(栃木県。群馬県の館林の近く)
農家の家族と生活の四季が生き生きと描かれています。

とにかく、この時代の人々は大人も子供を本当によく働く。
寝転がってこの本を読んでいると、なんだか申し訳なくなって来るほどである。特に農家という仕事は大仕事。近隣の人々と協力しあい、人情に溢れた環境で育った作物が、どれだけありがたく、美味しかったことか…

だからなのか、ここに出て来る食べ物の話は、質素なものであっても何故かとても美味しそうに感じるのだ。

また、テイのおばあさんヤスが言う言葉やさりげない思いやりには何度も胸を打たれました。

全体的にはなんてことのない日常の話なのかもしれませんが、小間物屋さんや、越中の富山の薬売りが来るシーンなど、読んでいて楽しい場面も多々あります。テイの修学旅行では「三越」が出てきます。ここでようやくテイと自分の時代が繋がった感覚が持てたのは、面白く感動的でありました。

四季の出来事が、かなり小刻みに紹介されています。
小さな引き出しをいくつも開けていくような楽しさがある1冊でした。

最後に現在のテイさんの様子が書かれています。
晩年、人の気持ちは故郷に戻るものなんだな…と、少しだけ目がしらが熱くなったのであります。