薔薇は生きてる: 山川彌千枝著のレビューです。
16歳で夭折した少女の散文、短歌、日記、友人宛の書簡
「書店員が本当に売りたかった本」の中でおすすめとして掲載されていた本。
山川彌千枝は、ドイツ語教授の父・幸雄と、女流歌人・柳子との間生まれ、
9人兄妹の末っ子でのびのびとした環境で育つが、肺結核にかかり16歳という若さで夭折した。
その彌千枝が、生前残した、散文、短歌、日記、友人宛の書簡、絵などが収録された1冊。解説には、穂村弘、川上未映子、千野帽子。
「薔薇は生きている」は、母の山川柳子が参加していた女流短歌誌「火の鳥」で発表され、やがて同年代の少女たちから絶大な支持を受けてきた乙女本だったそうです。彌千枝が8歳から亡くなるまでの記したものです。
少女から大人になる一番多感な時期に、布団の中で過ごす運命にあった彌千枝。
涙があふれてしまうような内容かと思ったのですが、ジメジメした雰囲気はなく、むしろ弾むような文章や会話からいつの間にやらグイグイ惹き込まれていくほど。なんだかこの天真爛漫な少女が自分の妹のように思え愛おしくなったりする。
もちろん、なかなか病気が良くならないジレンマから、病気を憎み、母親や看護婦に八つ当たりするシーンもしばしば出て来るが、そのたびに、自己反省を日記にしたためる健気さに胸を打たれる。
健康に憧れ、治った自分の世界を想像したり、お友達が遊びに来ることを何よりも楽しみにして待つ。そして、どこか「死」を感じている姿も見えたりもする。
なにもかも受け身な生活であるのに、そこに悲壮感はなく、「ねぇねぇ、次はこんなことして遊びましょうよ!」という彌千枝の声が聞こえてきそうなのである。
「先生の聴診器がゴムくさい、カーネーションの花がゆれている」
「ベッドを窓ぎわに寄せて空を見た、私は空の大きいのを忘れていた」
「美しいばらさわって見る、つやつやとつめたかった。ばらは生きてる」
彌千枝の放つ言葉の世界にぜひ一度浸ってみてください。
今も昔も、作家の大先生が絶賛されているだけのことはあります。
そうそう、この時代の少女の話言葉って、非常に女性らしく大人っぽい。
現代の学生と比べるとその差は激しい(笑)でも、友達に対して「あんた」と呼ぶのは何故?そこだけは謎であった。