相田家のグッドバイ:森博嗣著のレビューです。
相田家のはじまりから終わりまで。ちょっと変わった小説でした。
なにか珍しい本に出会ったなという気持ちです。もし私がもっと若い頃に読んでいたら、ポカンとしてしまったか、もしくは、途中で読むのを止めてしまったかもれません。
この話は、相田家の始まりから終わりまで、極端に言うと喜怒哀楽を排除して、淡々と綴ったものです。家族の話ではあるのですが、アットホームと言う感じには程遠い。けど、特に荒れていたり、問題が多い家族でもありません。
母親は物を捨てずに様々なものを綺麗に整頓して保存しておくという変わり者。父親は感情の起伏があまり出ない何を考えているのか分かりにくい人物。そんな二人の間に生まれた、ドライな息子と娘。
やがて、家族も年を取り、後半は親との永遠の別れまでのステップがリアルに描かれて行きます。
親はずっと変わらない存在と思っていても、確実に年老いていく。目を背けたくなる現実がやがてやって来るということを、繰り返し繰り返し、この家族を通して気づかされました。
親と別れて本当の自由を手に入れたと感じる息子。育った実家を解体して、第2の相田家はどこへ行くのでしょうか。
とにかく、すごく感動するとか、共感するという感じはないのですが、色々な意味での覚悟と決断を長い人生の中でしなければいけないこと。親の役割、子の役割。そして関係の距離感等々…後回しにしておきたい課題を突きつけられたような重みがこの本にあった気がします。ちょっと何かを引きづるなぁ…。