徳川慶喜家の子ども部屋 :榊原喜佐子著のレビューです。
◆見取り図を見ているだけで思わず目が「点」になってしまいました
著者は徳川慶喜の孫にあたり、高松宮妃の妹。
父は慶喜の息子、母は有栖川宮家のお姫様。
まず、小石川・第六天町の徳川慶喜家邸見取り図が最初のページを飾っている。
広いお屋敷には幾つもの細かい部屋が入り組んでいる構造で、外は広場や庭や
テニスコートがあり、この図を見ているだけで、その生活がいかに自分の世界と
違うことを思い知ることからはじまりました。
「お菓子所」という、ずっと居たいわ~と思わされる部屋から、
刑事やコックの住宅もあり、玄関の前には馬車回しなる場所まである。
「なんだそれ?必要なん?」と思ったら、これは、のちに出て来る、
姉上のご結婚の日に馬車が迎えに来るシーンでしっかり使われていて、
「必要だわ、これは…」と思わずうなるほど、立派な馬車がお迎えに
来ているではないか!王子さまに迎えに来てもらうには、
そもそも家の構造から…と打ちのめされたのである。
…とまぁ、見取り図だけで、やんややんやと想像が止まらず
なかなかページが進まない流れ。
やっと進んだかと思いきや、今度はお雛様のすごいバージョンに手が止まる。
各々のお雛様、特にお母様のものは、いざなぎ、いざなみの命のお人形まで
あるのですよーーー。どういうこと?
これだけの人形たちを並べるには大勢の人手がいるとか。
そりゃ、そうだ。段は人が乗っても大丈夫!なほど、大きくて立派なもの。
12畳半の部屋が埋まるほどって…ねぇ。
その他、別荘や学校のお話、ご結婚後の高松宮妃との関わり、
そして、庶民と違う言葉遣いなど、最後まで大変興味深く
読ませていただきました。
たいへん裕福なご家庭で羨ましい反面、お金を持って店で買い物を
することすら許されず、結婚されるまでデパートや店で買い物
したことがない…なんてエピソードを聞くと、やっぱりそれはそれで
不自由ですよね。
唯一の許される買い物は「学校の購買部」…これを買い物と言うには
あまりにも哀しすぎますよ。
なにはともあれ、知らない世界を覗くのは、やはり楽しい。
面白くてなかなか次に進めなく、やけに読み終わるまで時間がかかって
しまいましたけどね。