ジョー アンド ミー―釣りと友情の日々:ジェームズプロセック著の
レビューです。
あっという間に大自然の中へ。読書の中の夏休みがここにありました
ゆったりとした気分にさせられ、リラクゼーション効果の高かったのがこちらの本。 それもこれも、私が「釣り」が好きというのもあるのですが、本書は釣りだけではなく、年の差あるふたりの友情が静かに育まれていく様子が心地よく、どの年代の人が読んでもきっと気持ちが満たされるのではないかと思う内容なのです。
ジョーとジェームズの出会いは、15歳のジェームズが禁漁区での釣りにはまり、監視員のジョーに捕まってしまうところから始まる。
ジョーは禁漁区以外でもたくさん釣りが楽しめる場所があることを教えてあげようと彼を逮捕せず、その後、行動をともにし、友達として付き合います。
釣りというとちょっと退屈なイメージをお持ちの方も多いと思うけど、釣り方の種類、釣る魚の種類、釣る場所の違い等々、組み合わせ次第、季節に合わせてものすごいバリエーションが楽しめる世界なのです。
おれはここに20年かよっているが、同じだった年は1年としてない
という会話がありましたが、まさにその通り。1年と言わずこの言葉を「1日」と置き換えても良いくらい変化に富んだものなのです。
ここに出てくる話も、同じ釣りであっても様々なパターンがあることに気付かされ、こだわりなく自在に竿を操れる大人たちに私もすっかり夢中にさせられました。
また、魚が現れるシーンや釣れるまでの一連の流れがリアルに描かれ、大興奮!
アドレナリンが大噴出です!
自分だけが知っている特別な場所。
自分が作ったオリジナルのフライ(疑似餌)で釣る快感。
「今日こそは仲間より釣るぞ!」という意気込み。
冬には渓流に思いを馳せながら、コツコツとフライを巻き、春の解禁を待ちわびる。
そして、寒くても暑くても、魚に会うことの一瞬の喜びのために目的地に向かう。
その道中でさえも様々なイマジネーションを頭の中で繰り返す。
アングラーたちは、のんびりしているように見えるけど、川ではいろんな作戦を考えたり、仲間の釣果を意識したりで、思っている以上に忙しいのです。
この本は自分が釣りを通じて感じたことが、いっぱい詰まりすぎているのだなぁ。
そしてもうひとつ。
本書で一番素敵なのが、親でもない先生でもない大人と、一人の友人として対等に付き合う青年の姿がとてもよい。経験値から言っても敵わない大人に、ちょっと抵抗してみたくなる言動が見え隠れする。
うんと年上の友人は普通の学校生活では得られないことを、さりげなく教えてくれる貴重な存在。なかなかないですよねぇ。初老の男性と青年の友情って。
そういう意味でも釣りっていいなぁと思うのです。釣り好きって共通語を持っているようなもので、性別、年齢、国籍までも超えて「魚」の話題であっという間に壁を超え盛り上がってしまうという。
この二人がこんなに年が離れていても、熟成した友人のようになれたのは、間違いなく「釣り」がふたりの間にあったからであろう。
さて、なんだか釣りの話をしちゃうとついついお喋りになってしまうんで、このくらいにしておきますが、「読書の中の休日」気分で読める1冊としてお薦めいたします。
雄大な自然に包まれて釣りを楽しんでいる人々の清々しい生活と、都会生活をしている今の自分とのギャップが激しかっただけに、心をジャブジャブ洗われた気分になれました。