雪舞:渡辺淳一著のレビューです。
古さを全く感じなかった小説。ギリギリの決断の先にあるものは…。
この小説は、今年出版されたものとばかり思っていたのですが 実は昭和48年に書き下ろされていたということを 最後のページをめくるまで全く気づきませんでした。
通常、昔の本だと内容的に「あ、あの頃だな」など その本から 漂うムードとか、単語ひとつでも分かることが多いものですが、気がつかないくらい古さを感じさせない内容、そして文章。
ご本人も小説と同じくいつまでも若々しくいらっしゃるのは書くことと何か連動しているのでしょうか?
この話は若い医師が、助かる見込みのない幼い脳障害の子供とその両親にとってどうすれば最良な選択になるのか?必死に考え、もがき決断を迫られ、やがて独断で手術を決行するところから話が進んでいきます。
果たしてその先には希望は見えるのか…。
手術のシーンは凄い迫力でした。麻酔医のとの連携、看護師の交代で経過時間を知る、大量に吹き出る汗の様子など、具体的すぎるほど具体的で、瞬きをするのももどかしいくらい夢中で読み進めました。
こういう病院の話は、わりと患者側の立場に感情を置きがちな私ですが、「雪舞」では 医師という一人の人間の立場にずっぽり感情移入してしまいました。
自分の判断ひとつで他人の命の行方が変わってしまう世界。
医師の精神的疲労の行方はどうなっているのかな…。
舞台は北海道。
若い医師と患者の母親との微妙な関係にはいつもこの装丁のような雪がしんしんと舞っている雰囲気がずっと流れていました。
uzumaki-guruguru.hatenablog.com
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