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【レビュー・あらすじ・感想】私はあなたの記憶のなかに:角田光代

 

 

私はあなたの記憶のなかに:角田光代著のレビューです。

私はあなたの記憶のなかに

私はあなたの記憶のなかに

 

感想・あらすじ

あの時の大人の事情があることをきっかけに判ることもある

 

角田さんの短編集は久しぶりだな~と思っていたら1996年~2008年までに雑誌やアンソロジーとして書かれたものだそうです。

 

大人の複雑な事情がそこにあったけれども、子供のころはそれを自然に受け入れていたこと。なんとなく子供心にもいつもと違う何かを感じていてもそれが何かが解らない、けれども自分を脅かすものでもないからそのままでいる。

 

そんなちょっと不自然な出来事が、大人になったある日突然「ピン!」と来て、そのからくりが解けたような気になる瞬間がある。

 

 

 

 

8編ある話のなかで特に印象的だった「父とガムと彼女」は、父が亡くなって初めてあの時の大人の事情がどういうものであったのか気づく女性の心理を描いた話。

 

小学生だったある時期に母の代わりに学校の送り迎えをしてくれていた初子さん。母親は稼ぎが少ない父の代わりに忙しく働いていた。やがて母親は実家に帰ったきりになり、父と私と初子さんと暮らしたこともあった。


そんな初子さんはいつの間にか姿を消すのだが、時が流れて父が亡くなりその葬儀に彼女は現れる。父と初子さん、母と父、それぞれの関係は単なる娘の思い過ごしか?それとも、なんにもなかったのか・・・。

 

昔の微妙な関係と初子さんがくれたガムの匂い。香りと思い出がリンクするほろ苦さが相まった話はどこか切ないけれども、たまに覗きたくなる宝箱の奥にひっそりある大事なもののような感じがする。

 

ラストに抱き合って泣いている2人の女性の姿はとても印象的。そしてそれを見ていた娘のわたしが確信することも。

 

 

 

 

時が過ぎ気づけること、許し合えること。過去から切れることなく細く繋がっていた糸を手繰るような話は大人にならなければ見られない風景に違いない。

 

どの話もトーンは似ていました。角田さんは長編の人というイメージがありますが、
短編は短編で短くとも凝縮された人間模様にとても惹かれるものがありました。

 

文庫版