13ヵ月と13週と13日と満月の夜 :アレックスシアラー著のレビューです。
- 作者: アレックスシアラー,Alex Shearer,金原瑞人
- 出版社/メーカー: 求龍堂
- 発売日: 2003/05/01
- メディア: 単行本
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◆少女と老女。立場が変わって見えた世界は…
こういうタイトル、なんか弱いんですよね。
13という数字が3つ並ぶあたり、そして、なにが起こっても
不思議ではない満月と。
わたしの名前はカーリー。いま、わたしにすごいことが起こっている…
表紙に刻まれたこれらの言葉がどういうことなのか、先に進むまで
なかなか分らない。
12歳の少女2人が、年老いた意地の悪い双子の魔女たちに、
身体(肉体)を取られてしまう話です。
少女達は心はそのまま、肉体は老人へ。しかも、自分の姿が
変わってしまった事実をいくら話しても、周りはもちろん両親にすら
信じてもらえず、「ちょっとおかしくなった老人」という解釈をされ、
やがて老人ホームへ入れられてしまうのである。
幽体離脱とか呪文とか、ミステリアスな設定ではあるのですが、
個人的にはこの少女達が老人になり、初めて老化という哀しい
事実を受け止めなければならない部分が印象に残る。
思うように動かない足、入れ歯が外れそうになったり、
鏡を見てしわしわの身体を直視しなければならなかったり、
年寄りだからと妙に子供っぽい扱いを受けたりと…。
あとがきで作者も言っている通り、人は見かけだけでは分らない。
年老いた人でも中身は若いこともあるし、若く見える人でも中身は
随分年寄りじみている人もいる。
幸せそうに見えても…元気そうに見えても…等々。
自分の気持ちと肉体の老化。
走ってる時のあれです。気持ちは全速力、でも足は空回り~。
12才、身も心も最も軽やかな少女期。
80才という残りの人生もわずかという老年期。
この対極にある立場が一気に入れ替わることによって、
よりリアルにこのギャップが読者に伝わってきます。
お年寄りの気持ち、行動、話すことなど、理解しているといっても
本当のところは、やはり自分がその時を迎えないと解らない。
せめて声だけでも耳を傾けよう。
言いたいことや本心は本当にそこなのか?と丁寧に。
カーリーたちを通して私も思い直す。
13ヵ月と13週と13日と満月の夜…
この意味が解るのは113ページ。
思わずページの数字を見てギョッとした。
これは演出なのだろうか?