ふる: 西加奈子著のレビューです。
言葉があなたにふってくる
今回もまた違ったテイストの作品に出会いました。
読み終わって改めて見ると、うんうん、内容のイメージとすっぽり重なる。
池井戸花しすは28歳の職業はAVへのモザイクがけ。
やぁー、初っ端からこの設定で挑んでくるあたり、読者の興味を一気にかき立ててくれます。
内容はこの花しすの日常で関わる人間関係や出来事を、今と昔を振り返りながら進行していくという静かな生活風景を描いたものだけど、不倫、結婚、仕事など結構シビアな話も盛り込んでいる。
その日常は西さんならではのセンスのある会話で綴られているのですが、今回、もうひとつ印象的なのが「女性器」について。
これは花しすの職業からも今回の「鍵」になっていると思うのですが、様々なシーンでこの「女性器」が出て来る。(といっても、決して下品ではない)
自身の初潮であったり、介護されているおばあちゃんのそれであったり、仕事で見る外国人のそれであったり、産婦人科であったりと…要所要所その存在と女性との関わりを考えさせられるシーンが出て来る。
そしてもうひとつ。花しすだけが見える「白くてふわふわしたもの」。この正体はなんだろう?言葉にするのは難しい…。
同僚や友達との会話も、ちょっとじんわり来る感じも健在。でも全体を通してふわふわした浮遊感があるのです。これは読んでいただかないとなかなか伝わらないなぁ…と思うのです。
よ
い い
お し
本書内で何度も色んな言葉が降って来ます。
こんな風に言葉が空から降って来るように書いてあるんです。
忘れたころに降って来るこの言葉の数々も非常にユニークです。
今回書評ではあまり主人公の性格やら、その周りの人々について書きませんでしたが、もちろんどの人々も個性があり魅力があります。でもそれ以上に、全体的に漂う雰囲気を感じていただけたらいいなぁーと。
不思議さとふんわりした優しさに包まれる…
これからの季節にちょうどいい作品でした。