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死せる者の書:タニス・リー

死せる者の書:タニス・リー著のレビューです。

 

死せる者の書 (創元推理文庫)

死せる者の書 (創元推理文庫)

 

 

本が好き!の献本書評です。

 

◆「立ち入ったものはことごとく死ぬ」

     さぁ、勇気を出して入ってみようじゃないか!

 

 

評判のよいタニス・リー。一度は読みたいと思っていたところの献本!
とてもよい機会をいただきました。ありがとうございます。

「パラディスの秘録」というシリーズの連作ということで、
前作を知らずに読むことにちょっと不安がありましたが、
なるほど個別に読んでもあまり違和感なく入り込めました。

特に最初に読んだ「鼬の花嫁」。
1作目からとてもインパクトのある内容で、このイメージをもって
最後まで読んでいった気がします。短編において最初の話って
その後の話の期待値を上げるか、下げるか、結構大事なポジションですね。

内容は、相思相愛で結ばれた二人にもかかわらず、
新婚初夜に妻は愛する夫に殺されてしまうという悲劇が起こる。
一体、この夜、何が起きたのか・・・。

夫は妻を殺したこと以外、本当のことを何一つ語ろうとしない。
「なぜ、なぜ、なぜ?」を繰り返しながらラストへ向かう。

そして、凡人には全く思いつかないような出来事を知り、
「うっ、はぁー」と思わず声が漏れてしまう。
あーこのストンと落とされる感じ、嫌いじゃない。

そういう意味でもう一作品、「モルカラの部屋」。
古い屋敷に住む老姉弟から聞く、長い歴史を経てもなお存在する「開かずの間」に
まつわる話は、最後まで読者の不安な気持ちを引きつれて展開する。
それもこれもこの部屋は「立ち入ったものはことごとく死ぬ」と言われているのだから。

モルカラ・ヴァンカは銀のドレスをまとい、黒髪を長く垂らし、
喉にダイアモンドを飾り、手には花を握って自分の椅子に座っていた。
しかし彼女は死体であり、夏の暑さのせいですでに腐り始めていた。
溶けかけた肉と、淀んだ目、頬と額に露出した白い骨、扇の骨のごとき指の骨。



かつてこの部屋に住んでいた女性の姿を描いた場面。
腐りかけている女性の描写はおぞましいシーンであるにもかかわらず、
どこか妖艶な雰囲気を漂わせる。

この話の結末は恐怖心を置き去りにするではなく、
「むむむ、そう来たか!」と膝を叩いてしまう。

読者を巻き込むだけ巻き込んで、にやりと笑うタニス・リー
横顔が見えるような作品です。

このゾワゾワする感覚とうっとりする感覚は、作品全体を通して感じられるもので、
映像的にはずーっと薄いベールを通して覗いているような、
そんな独特な世界が広がっていました。

タニス・リーの作品の素晴らしさを語るにはまだまだで、
自分の言葉足らずが気になるわけですが、長編のほうもじっくり読んで、
もうすこし奥深いところまで読みこんでみたいと思いました。