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故郷のわが家:村田喜代子

故郷のわが家:村田喜代子著のレビューです。

故郷のわが家

故郷のわが家

 

 

◆親の家を片づけるという大変な作業。なのになぜだか大人の休日的なゆたかな時間を感じさせられものがあった素敵な話。

 

 

故郷の古い家を処分するにあたり、笑子さんは犬のフジ子と一緒に九州阿蘇の久住高原に戻って来た。

親が亡くなった後の整理という大仕事。田舎の大きな家だと部屋数も多いし、大家族がそこで過ごしていたこともありそれはそれは大変だと聞く。しかし笑子さんの様子を見ていると「自分の育った家の片づけ」がとてもゆたかな時間に感じられるのだ。

ここでの笑子さんの生活は自由だ。早めに休み、夜中に目が覚め一杯やりながら深夜ラジオに耳を傾ける。静かな部屋で一人と一匹。蘇ってくる過去の思い出を辿り始めるとやがて夢と現実の狭間の世界へ誘われる。この独特な感じが村田さんならではでたまらない。いつか読んだ「屋根屋」の話もチラッと登場したりして懐かしい。

チョキチョキチョキ.......。
チョキチョキチョキ.......。

雨の日。
家族が使っていた掛布団や座布団の処分の作業を始めた笑子さん。チョキチョキと縫い糸を切って、がわを剥いて中身の綿を取り出しています。

家族の体温が沁みこんだとも言える布団の数々から思い出される日々や、いつか見たテレビ番組の内容の一部が止めどなく語られる。そのアンバランスな感じ、混沌とした感じが、これまた不思議な空間を作り出す。私はこの話の書かれている「野の輝き」の章が本当に好きです。

小説全体がうつらうつらしている。動物が喋る、笑う。犬のフジ子と同じ夢をみる。リアルな話だと思っていたら夢の話だったりする。コロコロ転がって来る話は、時にクスリと笑わされたり、ちょっと怖かったりするのだけれども、全部ひっくるめて最後は愛おしい時間にすり替わる。

大人のちょっと長い休日という言葉がしっくりくる。派手なレジャーではないけれど、どこよりも馴染みのある生まれ育った場所で好きな時に起きて、食べて、寝て、散歩してご近所さんと話す。そして既にいなくなった人々と過ごした日々を想い返しながら、故郷を離れる準備をする。

もし自分だったら大量の荷物の片づけで相当イライラしちゃいそうって思ったけれども、笑子さんの様子を見ていたらこんなにゆたかな時間はそうそう経験できるものではないと感じる。

笑子さんはこの自由であった時間をこんな言葉で表現している。

この過不足のない素朴な飽和状態は、母の胎内の安逸な時間と何て似ていることでしょう....。



人は色々なものを整理ながら年を重ね振り返り、またお母さんのお腹という故郷に戻っていくのでしょうか。そんな時間もおしまいになり笑子さんはまた下界のくらくらする世界に帰ります。

                  ━━*━━

本全体が現実からちょっと浮いているような世界で、スーッとその世界に誘われる感覚がもう本当にたまりません!一緒に居た犬のフジ子までもが、人間っぽくてお茶目で良かったな~。

 

 

 

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