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【レビュー】南極1号伝説 ダッチワイフからラブドールまで-特殊用途愛玩人形の戦後史 :高月靖

 

 

南極1号伝説 ダッチワイフからラブドールまで

 -特殊用途愛玩人形の戦後史 :高月靖著のレビューです。

南極1号伝説 ダッチワイフからラブドールまで-特殊用途愛玩人形の戦後史

南極1号伝説 ダッチワイフからラブドールまで-特殊用途愛玩人形の戦後史

 

 

 

◆人形たちに求めるものは十人十色。

 

・ド―ラ― → ラブドールのユーザー
・むしゅめ → ラブドール
・ユミザー → ラブドールに湯水のようにお金を使ってしまう人
・ミーモする →モミモミする

 

これらの言葉はラブドールのユーザーたちがネット上などで使っている用語らしい。
世の中には自分の知らない世界や言葉がたくさんあることを改めて感じてしまいます。

 

本書はこのラブドールが現在の形状になるまでの進化と変遷をかなり詳しく紹介することに大半を費やされているといういたって真面目な内容で、人形へ注ぐ情熱の強さを感じさせられます。

 

以前、タカラの「リカちゃん人形」の本を読みましたが、どちらも同じくらい人形にかける気迫がありました。

 

私が関心をもったのは人形よりもむしろどんな人たちが、こんなにも高額なものを買い求めているのだろう?という部分です。これらの疑問はPart4の「ダッチワイフの主人たち」で紹介されていて一番面白かった。

 

ラブドールにはレンタルもあり、デリバリーされていた話にまず驚いた。普通の風俗のように料金や時間帯などのシステムまできっちりある。しかし、レンタルは傷ついたり、衛生面での不安などもありトラブルも絶えなかったという。

 

また、ネットオークションでは中古が売られているとか…。「里親募集」など、まるでペットの里親募集と同じムードである。

 

ユーザー同士の交流も活発で、オフ会をして情報交換をしたり、人形をスノボ用のバッグに入れて大勢のラブドールと一緒に旅館に泊まりに行くというイベントめいたこともしていたりと、これらのマニアっぷりにやはり着いていけない何かを感じずにはいられない。

 

長く一緒に過ごしていくとラブドールに対しての使い道も変化していうようだ。「ただいてくれるだけで」、「添い寝だけでいいや」など元来の目的から外れ、癒しとして存在を楽しんでいるようだ。何もない部屋で「待っている」という感じが良いらしいのです。

 

このド―ラ―達が人形たちを愛おしく想い、大事にしているということは文面からも伺える。その証拠にこれらシリコン製人形は手入れをマメにしなければならない。お風呂に入れたり、オイルのべたつきや、静電気によるゴミの吸着を防ぐためにベビーパウダーの塗布を定期的に行う。

 

なので、「だらしない人間」には向かない趣味ということだ。もともと整理整頓好き、性格もきっちりしているから仕事も出来る人がユーザーには多いらしい。

 

ということで、部屋の中に居る人形たちの写真がたっぷり掲載されているのですが「蝋人形館」みたいです。無表情でいかにも血が通ってない肌の彼女たち…。怖いっす。

 

これらの話とは別に、障害者や高齢者の需要があるということ。せっかくこれだけの技術をもって進化してきた人形の数々。視野を広げてみると、意外なところでの利用も可能になりそうな気もします。しかし「破けてしまう」などの言葉を見るたびに、やはり人形なんだな…と底知れぬ侘しさというか虚しさが最後までまとわりついてしまいました。


「変な本」ではありますが、「ものづくり」のお仕事をされている方も愉しめるのではないかなと思います。決してエロ路線という本ではないです。…しかし、写真掲載が多く、どれも公共の場では見るのは難しいと思うので、そこはお気をつけを!